法定相続情報証明制度と家系図

平成29年5月から、法定相続情報証明制度がスタートしてから約1年強が経過しました。依頼者の方にそれとなく聞いてみることはあるのですが、まだまだ浸透してきたなという感じは受けませんが・・・

(もっとも、この1年以内にお身内の方での相続などを経験された方でなければ、そもそも必要となる機会もないので、当然といえば当然かもしれません。)

制度の内容としては、相続が発生した場合、法務局に対して、必要な戸籍等と申請書類を提出することで、法務局が認証印付の証明書(=法定相続情報)を発行してもらえる、というものです。

現物はこんな感じです。

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法務局で戸籍等関係書類を確認した上で、家族関係(厳密には、法律的な相続関係)を証明してくれるため、相続に伴う様々な手続きの中で、今までは戸籍の束をその都度提出しなければならなかったもの(預金の解約・名義変更、証券会社の相続手続き、保険会社への請求など)において、その代わりにこの証明書1枚を提出すればOK、ということになっています。

一般的に、相続関係を明らかにするための戸籍謄本というのは、最低でも5~6通、通常は10通以上というケースが多く、下手すると数十通にのぼることなどもあります。

今までは、亡くなった方が複数の預金口座を持っていた場合などは、これらの原本及びコピーを提出し、担当部署で内容の精査を行ったうえで、問題なければ手続きが進み、後日原本を返却してもらうという作業を、それぞれの金融機関ごとに繰り返し行わなければなりませんでした。

この制度を利用すれば、相続関係については、法務局がいわば「お墨付き」を与えてくれるわけですから、金融機関に対して戸籍の束を提出する必要はなく、その手間はかなり軽減されます。
※法務局でこの制度を利用する(お墨付きをもらう)ためには戸籍は必要になりますので、戸籍自体を取得する必要がなくなった、というわけではありません。

 

また、各金融機関内部で、今までは、提出された戸籍の束をもとに、相続関係に間違いがないかどうかをきちんと確認するのに時間がかかっていましたが、この証明書があれば、その確認の手間も省けますから、金融機関での手続き自体の時間も短縮されると思います。

ただ、注意しなければならないのは、これはあくまで法律上の「相続関係」を明らかにするものであって、「家系図」ではありません。

何が言いたいかと言うと・・・

例えば下記のようなケースを考えてみましょう。

相続関係図(ブログ用)

 

 

 

 

 

 

 

 

亡くなったのはXさんで、Xさんは生涯独身であったため、配偶者もお子さんもいませんでした。

また、Xさんのご両親は2人ともすでに亡くなっており、Xさんのきょうだい5人(A~Eさん)のうち、姉のCさん以外の4人は、同じくお子さんがいなくて、Xさんより先に亡くなっているとします。

この場合の、いわゆる家系図、というのは、上記の図のようなものをイメージされるかと思います。
※実際に、我々が相続登記の際に作成する相続関係説明図は上記のような感じです。

しかし、このケースで、「法定相続情報」として作成されるものはこれ↓です。

法定相続情報(ブログ用2)

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごくシンプルです。

A、B、D、Eの4人は、そもそも記載すらされません。
※記載した書類を法務局に提出すると、削除するように言われます。
これは、A、B、D、Eの4人は、Xさんに子どもがいない場合は相続人にはなるのですが、Xさんよりも先に亡くなっており、かつその子ども(Xさんから見た甥、姪)もいないため、「Xさんの相続関係に無関係」だからというのが理由です。

 

つまり、上記のケースでは、Xさんの相続人は、姉であるCさんのみであり、その2人の関係性がわかる最低限の情報しか記載されない、というわけです。

どうですか?実際には6人きょうだいであったのに、2人しか記載されていないものを「家系図」と言われても違和感がありませんか?

 

中には、この制度のことを、「法務局がお墨付きを与えてくれた家系図」のように理解されている方がいらっしゃるのですが、必ずしもそうではない、ということがお分かり頂けたと思います。

 

とはいえ、制度自体は事案によっては使い勝手の良いものですし、何より、この証明書の発行自体は無料です。5通とっても10通とっても無料です。

不動産の名義変更(相続登記)が必要になるケースであれば、ついでに取得しておけば他の手続きがラクになりますし、不動産がないようなケースでも申請は可能ですか
ら、もらっておけば他の手続きに使うことは可能です。

相続登記が不要の場合(亡くなった方名義の不動産がない場合)であっても、ご依頼頂ければ戸籍の収集から証明情報の申請、取得まで、司法書士が行うことは可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

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