以前に債務整理事件の処理をさせて頂いた依頼者の方から、ご自宅の相続登記のご依頼を頂きました。
対象不動産はご自宅の土地と建物ですが、建物はお父様名義で、土地はお祖父様名義のままになっているとのこと。
お祖父様は昭和60年頃に、お父様も平成15年に亡くなっており、いまだ名義変更がなされていないとのことでした。
建物部分の相続に関しては、相続関係がシンプルなので特に問題はなさそうでしたが、土地については、お父様が6人きょうだいであったこと、お父様以外にも伯父、叔母にすでに亡くなっている方がいることもあって、相続人の数が10名を超えてしまっています。中には直接連絡がとりづらい方もいらっしゃるとのことで、ひとまず建物部分の相続登記の準備を進めながら、土地の相続については他の相続人にコンタクトを試みることになりました。
不動産の参考資料をお持ちだったので、こちらでインターネットから現在の登記簿謄本を確認してみたところ、概ねご本人様のご記憶通りでしたが、建物部分には、30年近く前に設定した抵当権がそのまま残っていることが判明しました。債務者はお父様の名前になっています。
ご本人様に事情を確認したところ、お父様が亡くなってからしばらくして、ご本人様が分割で支払って完済しているとのことでした。その際に、金融機関から担保抹消の書類を受け取ったか確認するも、はっきりとは覚えていないとのことです。
このような場合に考えられるのは2パターンで、1つ目は、そもそも金融機関から担保抹消書類を受け取っていないというケースです。この場合、金融機関内部で、抹消書類一式が保管されている可能性が高いので、事情を説明すれば、書類一式を交付してもらえます。今回のように、相続が絡んでいる場合であっても、相続人の方から請求することが可能です。
もう1つは、ローン完済時に、金融機関から担保抹消書類を受け取っているにも関わらず、それを紛失してしまっているケースです。抹消書類の中の、解除証書や代表者事項証明書といった書類は、金融機関に掛け合って再発行してもらうことが可能です。ただし、抵当権設定契約証書(担保における権利書のようなもので、法務局の受付印が押されているもの)は再発行することができませんので、これを紛失している場合には、若干手続きが変わってきてしまいます。
ご本人様はこのあたりのご記憶が不確かでしたが、金融機関に確認してみたところ、まだ書類は保管されているとのことでした。相続関係書類と、抹消書類発行の申請書を提出すれば、一式受け取ることが可能とのことで、ご本人様も一安心です。
今回は、建物がそこまで新しくなかったため、相続登記と担保の抹消登記を併せて、税金込みで約10万円ほどで済みそうです。その旨を伝えたところ、「えっ、そんなものでできるんですか!?」との反応が。どうも、もっと何十万円もかかると思っていたご様子。
司法書士や弁護士に何か手続きを依頼すれば、少なくても数十万円かかる、といったようなイメージをお持ちの方は大勢いらっしゃいます。たしかに複雑な案件や、事情によっては費用が加算されることもありますが、さほど複雑ではない相続登記などは、報酬部分は10万円もかからないケースがほとんどです(登録免許税という税金部分は、不動産の評価額によって異なります)。
ある程度のご状況(相続人の数や対象不動産の数など)がわかれば、概算の費用をお伝えすることも可能ですので、お見積りのみのご依頼でもお気軽にご相談下さい。