自己破産、個人再生などの裁判所を通じて行う債務整理の場合、自動車は必ず処分しなければならないと思われている方が多いようです。
これは、半分は本当ですが、必ずしも処分しなくてもいいケースがあります。自動車に関しては、生活、通勤などで利用されている方も多く、できれば手放したくないというのが誰しもの本音でしょう。では、どのようなケースで処分しなければならず、また、処分しなくていいのか、順序立てて説明します。
①ローンが残っているかどうか?
まず第一には、そもそも自動車ローンが残っているかどうかです。ローンを組まずに現金で購入している、あるいはローンをすでに完済されている場合、自動車は完全に本人名義の財産になります。
この場合、個人再生手続きにおいては、そもそも処分の対象になりません(清算価値として計上するケースはありますが、処分する必要はありません)。
また、自己破産の場合でも、初年度登録(新車時点)から7年(軽自動車は5年)以上経過しているものについては、便宜上財産価値なしとして、処分する必要はありません。
したがって、長年乗り続けているような場合は、ほとんど処分の対象にはならず、そのまま乗り続けることが可能です。
では、ローンがまだ残っているという場合はどうでしょうか?
②車検証上の所有者は誰か?
自動車ローンを組んで購入している場合、ローン完済までは車検証上の所有者(使用者ではありません)がローン会社になっているケースがほとんどです。この場合、ローン完済までは、法律上の所有権はローン会社にあり、完済して初めて、晴れて本人名義になります(名義変更書類をローン会社が送ってきます)。
そのため、ローンの途中で債務整理をすると、ローン会社は、まずは自分のモノである自動車を引き揚げて換価します。この場合は、残念ながら自動車は失うことになります。
ただし、中古車などでローン金額が多額でない場合や、JAなどの一部の自動車ローンは、購入時にローン会社名義ではなく、本人名義にしている場合もあります。この場合は、ローンが残っていたとしても、所有権は本人にあるので、①と同様、処分しなくても良い可能性があります。
③親族等の援助は可能か?
不幸にして、所有者はローン会社名義になっており、ローンもまだ残っているという場合でも、親族等でローンを肩代わりできる人がいる場合は、手放さなくても良い可能性はあります。すなわち、援助で自動車ローンを完済し、その方の名義に変更した上で、自動車自体は借りて使っているという状態にすることで、処分を免れることができるかもしれません。
ただしこれは、援助してくれる人間が周りにいることが条件になりますので、誰でも可能というわけではありませんが…
それ以外にも、場合によっては他の家族名義で安価な中古車を購入してそちらに乗り換えたりすることも可能かもしれません。
都市部に住んでいると、自動車はなくても十分に生活はできますが、いざ乗り出すとなかなか手放すことができなかったり、そもそも生活や仕事に欠かせないという場合もあります。そういった場合でも、状況次第では自動車を手放すことなく借金を整理できる可能性は十分にありますので、整理に踏み切りたいけど自動車がネックだという方は、1度専門家にご相談してみることをお勧めします。