前回の記事で、債権譲渡時点で過払いが発生していても、譲受会社(B社)は当然にはその過払いを承継しない、という話をしました。
そこでよくある例として、譲渡会社であるA社にはほとんどお金がなく、B社にお金があったとしても、A社に対しての過払いを、B社に請求はできないケースが多いと説明しました。
では逆に、「A社にはお金があるが、B社にはお金がない場合」はどうでしょうか?
(例)
債権譲渡時点での約定残高・・・50万円
(同時点での引き直し計算後残高・・・▲30万円)
↓
A社からB社に、約定残高50万円で債権譲渡する旨の通知が来た。
その後、さらにB社に対して合計10万円を支払った。
前回の記事の理屈でいうと、A社に対しては譲渡時点での過払い分として30万円、B社に対しては譲渡以後に支払った分として10万円をそれぞれ請求できることになります。
しかし、A社とB社との間の債権譲渡契約で、
「本件の過払いについては全てB社が責任を負う」
という定めがあるとしたらどうでしょうか?
前回の最高裁判所の判断は、
「B社が過払いを引き継ぐかどうかは、A社とB社の契約内容次第で、原則は引き継がない。」
といった趣旨のものでした。
これを逆手にとって、お金のないB社に債権譲渡して、「過払いも全部B社が責任持ちますよ」などという契約を結ばれてしまった場合、(お金のない)B社に対してしか請求ができず、(お金のある)A社には請求できなくなってしまいます。
実際に、一部の業者間では上記のような債権譲渡が行われています。表面上はつながりがないように見えても、実は裏でつながっているB社に対して、過払いとなっている取引を譲渡し、譲渡契約の内容を盾に、A社は責任を負わないと主張してきます。
B社はほとんどペーパーカンパニーのような会社で、そもそもB社名義での財産は存在しないか上手く隠しているため、B社に対して裁判しようが差し押さえしようが回収は困難、事実上、A社とB社で結託して、過払い金を踏み倒しているようなものです。
しかしながら、こんなことが許されていいはずがありません。体のいいトカゲの尻尾切りのようなものです。こんなことが認められてしまうと、貸金業者は次から次へと実は過払いになっている取引を別会社に譲渡し、その会社に過払いの責任も負うという契約内容を作り上げて、責任逃れに走ってしまうことになります。
現在、まさに上記のようなご相談を頂いています。
当然許しがたい行為なので、なんとかして責任を負わせるべく訴訟の準備中です。結果は追ってご連絡させて頂きます。