支払督促異議申立事件

先日受任した被告事件の件で、依頼者と打ち合わせを行いました。

 

この方は、3年半ほど前にとあるカード会社からの借入れを延滞してしまい、その後一切支払いができていませんでした。当時諸事情により収入が激減し、自己破産も検討したものの、結局専門家に支払うお金の余裕もないとのことで、破産もしないまま今日まできました。そのうちに、業者からの督促もほとんどなくなったため、半ば忘れかけていたところに、今回、債権回収業者から支払督促を申し立てられました。

 

支払督促を打たれた以上、無視を続けることはできません。今回は時効を主張することもできないため、なんとか支払っていく方向で話を進める必要があります。家計状況には余裕はありませんが、本人にも支払いの意思はあるとのこと。ただし、本人は仕事が忙しく、平日に裁判所に行けないことと、債権者と直接話をするのが怖いとのことで、被告代理人として対応することとなりました。

 

受任時点では、督促異議申立期間がぎりぎりであったため、ひとまず急ぎで受任し、裁判所に代理人就任の旨と督促異議申立を行いました。その後、通常訴訟に移行し、初回期日が指定されたため、改めて本人に来所して頂き、現在の家計状況等の詳細を伺いました。

 

債権者側との話し合いに臨むにあたって、本人の情報を何も持っていかないのでは話になりません。中には、現在の債権額と、ある程度妥当と思われる毎月の支払い原資のみで交渉するという方も聞いたことはありますが、お金を借りて支払っていないことは事実ですから、債権者にもきちんと誠意をもって話をすべきではないかと思います。

 

現在の家族構成も含めた生活の状況、家計収支、勤務先の状況(今回は債権者は現在の勤務先を知っているとのこと)、今後の見通し等もふまえた上で、可能な範囲での和解案を提示すべきだと思います。つまり、『毎月●万円以上は厳しい。ただし、●万円であればなんとか頑張って支払っていける』ということを、客観的にも納得してもらえるだけの材料をもっていくべきだと思います。

 

※中には、当初「毎月1万円しか払えないのでそれで交渉してほしい」と言ってきていた依頼者が、家計状況を詳しく伺うと、毎月10万円以上の余剰があることが判明したケースなどもあります。「どのみち今後の利息カットしてもらえるなら、毎月無理して払う必要もないと思った」とのことでしたが、それではあまり誠意ある対応とは言えない気がします。

 

ある程度詳細を伺った上で、返済交渉のベースも調ったため、初回期日ではその範囲で収まるよう交渉してみる予定です。なんとか上手くまとまってくれればいいのですが・・・

 

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支払督促と過払い

2年ほど前に前事務所で手続きをされた依頼者が、債権回収業者からの支払督促を持ってこられました。

 

見ると、数年前まで利用していたクレジットカードについて、完済に至らずに放置していた様子。キャッシングとショッピング利用分で合計すると、元金が約60万円、支払っていなかった期間の利息・遅延損害金が約40万円で、合計100万円程度の請求になっています。しかも、最後に支払ってから5年は経過していないため、別件のように時効を援用して終わりというわけにもいきません。

 

以前に手続をされた時点では、すでに支払を辞めて2年ほど経過しており、督促も来ていないからということで、この件については申告していなかったというのです(それもそれで困ったものですが…)。

 

この方は、以前に債務整理手続きを経験済みのため、今回の件についても、

 

これ、キャッシングでも使っとったから、過払いでなんぼか減るんやろ?

 

とのこと。

 

たしかに、クレジットカード会社の多くは、キャッシング取引について、平成20年前後までは、20%以上の金利を設定していたため、それ以前にキャッシング取引がある方については、過払い金が発生する可能性はあります。そのため、利息制限法で引き直せば、本人が認識している借金額よりもかなり少なくなるケースはたくさんあります。

 

しかしながら、今回はすでに債権回収会社(サービサー)に譲渡されており、しかも支払督促(≒裁判)までされています

 

裁判所は、基本的には利息制限法の制限利率を上回る利息での貸付について、利息制限法に引き直し計算をした上での残金の請求しか認めていません。つまり、裁判を起こされたということは、すでに引き直し計算はされているということなのです。

 

また、債権回収会社は、(それらしい名前を騙るヤミ金まがいの詐欺会社を除き)法務省の許可がないと営業ができません。
※法務省が営業許可した債権回収会社の一覧はコチラ(法務省HP)。

 

そして、これらのサービサーは「債権管理回収業に関する特別措置法」という法律に従って業務を行わなければならず、その18条において、「利息制限法に定める制限額を超える利息・賠償額の支払いの約定がなされている債権について,利息制限法の制限額内に引き直さずに履行の要求を行うことの禁止」を定めています。

 

つまり、今回のケースに当てはめると、裁判を起こされている時点、もっと言えば、適法なサービサーに譲渡されている時点で、すでに引き直し計算をされた上での残額部分を請求されているということなのです。

 

したがって、今回の請求額が、引き直し計算によって減額されるということはありません。というよりも、すでに減額されて、それでもなお利息損害金込みで約100万円の支払義務があるということなのです。

 

この説明に、依頼者も落胆したようですが、少なくとも借りたことは事実なので、なんとか分割で払っていきたいとのこと。

 

それであれば、急いで支払督促異議申立をしなければなりません。2週間の期限が迫っておりましたので、早急に委任を頂き、ひとまず裁判所に支払督促異議申立書を提出しました。

 

これで通常裁判に移行することになりますが、訴訟代理も含めての依頼でしたので、当方が代わりにに裁判所に行って交渉可能です。通常訴訟期日までにはまだ時間がありますので、当日までに、依頼者の家計状況を精査して、現実的かつ誠意ある内容の和解案をもって債権者との交渉に臨みたいと思います。

 

※支払督促や裁判所からの訴状は、仮に大昔の借金であっても、放置すれば相手の言い分を全て認めたことになってしまい、後から争ったり交渉したりというのが難しくなる可能性があります。これらが届いた場合には、早急に専門家にご相談されることをお勧めします。

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