休眠担保権の抹消①

先日ご依頼頂いていた、相続登記と個人の抵当権抹消登記が、およそ半年がかりで無事終了しました。

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こちらの不動産、所有名義は昭和30年代に亡くなられた方のまま、さらにそこに、昭和35年に設定した個人の方の名義の抵当権が残ったままという、若干複雑なものでした。

 

相続登記の方は、名義人の方の子ども孫も亡くなっていましたので、現在の相続人の方の数も多く、これはこれで大変だったのですが、相談者の方が相続人のうちの1人ですので、そこから戸籍をたどっていき、連絡を取ってなんとか皆様の承諾をもらって名義変更できました。
が、問題は個人名義で設定された抵当権の方でした。

 

そもそも担保設定自体が60年も前の話ですので、当然相談者の方は当時の事情もわからず、抵当権者の名前を聞いても全く心当たりはありません。手掛かりと言えば、登記簿上に記載された住所と氏名のみ。しかし、それでもなんとかこの担保を消さなければ売ることもできません。
このような、数十年前に設定されて、現在ではすでに効力はない(完済していたり、時効にかかっていたりで、返済の義務はない)と思われるものの、登記上は権利が残ったままになっているものを総称して「休眠担保権」と呼びます。この休眠担保権を抹消するための方法はいくつかあり、この分野だけで書籍が発刊されるほど、実はやっかいな問題でもあります。
抵当権者が金融機関の場合、合併や解散で、当時の会社がなくなっていたとしても、商業登記簿謄本などから会社の変遷をたどることができますし、そこから当時の清算人の方や、現在の存続会社に連絡を取って抹消に協力してもらうことが可能です。場合によっては、裁判所に特別代理人の選任申立を行ってから抹消します。
ところが、抵当権者が個人の場合、そもそも相手方を探し出すことすら困難です。手掛かりが担保設定時の住所と氏名しかない上、住民票は、その方がそこから住所を移転させたり、亡くなったりすると、原則5年で廃棄されてしまうため、何十年も前の住所氏名だけでは、住民票を取得することもほぼできません。昔は、住所イコール本籍地としていた方も多いため、登記簿上の住所をもとに戸籍を取得することもできますが(戸籍は住民票よりも保管期間が長いため、時間が経っても保管されている可能性が高い)、本籍地と住所が違う場合はこれも無理です。
そうなると、登記簿上の住所地である現地を訪問し、本人もしくはその家族(子孫?)が居住していないかなどを実際に調べる必要があります。その結果、完全に行方不明であれば、抵当権者行方不明を理由に、供託金を収めて抹消行方不明の抵当権者を相手取って訴訟を提起して抹消などの方法によることとなります。
①の場合、ざっくりいうと、当時から現在までの利息・遅延損害金を全額供託(=法務局に預け入れ)しなければなりません。
設定当時の金額が数百円とか千円程度であれば、上記を計算しても大した金額にはならないのですが(物価や貨幣価値の変動は考慮しません)、今回は、設定金額が●十万円であったため、この方法だと軽く数百万円を供託しなければならないこととなり、事実上困難でした。
そこで、登記簿上の住所地(現在は存在しない番地であったため、現在の番地表記を調査した上で)を訪問してみたところ、そこには抵当権者と同じ苗字の表札が・・・家自体もかなり年季が入っており、相当以前から住まわれていたのではないかと思われます。これは、抵当権者もしくはその家族が現在でも居住している可能性が高いと思われました。その場合、仮に抵当権者が亡くなっていても、相続人の方々に協力してもらえれば、抹消手続きは可能です。一筋の光が見えたと思ったところ・・・
長くなりましたので次回に続きます。

 

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