債権譲受人からの請求

「聞いたこともない業者から、昔の借金の請求が来たんです!」
最近このようなご相談を頂くことが増えています。

先日ご相談に来られた方も、このような書面を持ってこられました。
※一部マスキングしています。

 

債権譲受通知書

 

 

 

 

 

 

 

 

届いたのはこの書面だけかを尋ねると、これだけですとのこと。
こちらの書面、一見すると取立や差押えといった、一般の方からすると恐ろしげな言葉が並んでいますが、我々からするとちょっと「??」な内容です。
まず、債権譲渡という法律行為についてですが、これ自体は、債権「譲渡人」(権利を譲渡した人)から通知をしなければ効力は発生しません。
にもかかわらず、この通知は債権「譲受人からのみの通知になっており、しかも、相談者の方曰く、これ以外に通知は届いていないとのことなので、そもそも債権譲渡の効力は生じていないことになります。
この点について詳しく解説します。

債権譲渡人
もともとその債権(権利)を有していた人。
一般的には、当初お金を借りた直接の相手方であることが多い。
譲渡によって債権者が変わると、「原債権者」(=もともとの債権者)といったような表現もされる。
債権譲受人
漢字が似てるのでまぎらわしいですが・・・
債権譲渡人から債権(権利)を譲り受けた人。
一般的には、債権回収会社などであることが多い。
本来の支払いができなくなったような案件を、まとめて安くで買い取って、回収業務を行うようなケースが多い。

 
(例)
(借主)がから100万円を、毎月1万円ずつ返済する約束で借りていた場合
※ややこしいので、ここでは利息は考えないものとします。

は、最初の1年は約束通り支払っていましたが、その後支払いができなくなりました。
この時点での借入残高は、100万円-12万円(1年分)=88万円です。

は何度も催促しましたが、は支払ってくれません。
それでもなんとかお金が欲しいは、この「から88万円返してもらえる権利」(=債権)を、に50万円で譲ることとしました。

としては、このまま1円も返してもらえないぐらいなら、50万円でももらえた方が良い、という判断です。
他方、としては、88万円の権利を50万円で手に入れたのですから、なんとかから50万円以上回収できれば儲けが出ます。

この場合、

債権譲渡人
債権譲受人

となります。

そしてこのケースでは、必ずからに対して、

「権利はに譲ったから、今後はに対して支払ってね」

という通知をしなければなりません。

から、

の権利を譲り受けたから、今後は自分に対して支払え」

という通知だけでは意味がないのです。

なぜならば、譲り受けた側からだけでの通知では、それが事実かどうかわからないからです。

上の例で、突然が出てきて、と同様、自分に払えと言ってきたら、からすると、わけがわからなくなってしまいます。

そのため、必ずもとの権利者であるから、誰に譲渡したのかを通知しなければならないことになっているのです。
翻って今回の通知を見ると、下部に「原債権者」として、もともと借りた会社名が記載されているものの、この通知の差出人は債権譲受人のみなので、これだけでは効力はありません。

 

また、文章の内容も、そもそも日本語としてオカシイ部分もあります。

「冠省 この度、弊社は、下記の原債権者が貴方様に貸し付けた。
金銭貸付債権の・・・」

など。

 

おそらく似たような書面を多数の方に送っていると思われますが、正直「???」といった感じです。

 

しかし、下部に記載された原債権者の表示は、合っているらしく、相談者にも、たしかに借りた記憶はあるとのこと。
これが間違っていれば、そもそも架空請求の類である可能性も高いのですが・・・
いずれにしても、譲渡の事実が真実だったとしても、まっとうな会社とは思えません。
きちんと話をして、場合によっては消滅時効の援用が可能かもしれませんので、しっかりと対応させて頂きます。
同様の督促や通知が届いた場合、直接連絡するのではなく、まずは司法書士や弁護士といった専門家にご相談されることをお勧めします。

 

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