以前に
こちらで紹介した、自己破産後の請求のケースですが、進展がありましたので報告します。
結論から言うと、訴訟になることなく、債権者側が請求を諦め、債権債務なしでの和解に応じるとのことでした。
まず、こちらが最初に代理人として話を持ちかけた際、債権者側の言い分は、
「自己破産していることは(本人から聞いて)知っている。しかし、その際に債権者一覧表に当方が記載されていなかったため、裁判所からの通知等は一切来ていない。よって免責の効力は及ばないので、請求は止めない。」
というものでした。
債権者一覧表に記載しなかった場合の免責の効力については
前回の記事で書いた通りです。
今回は、自己破産当時、依頼者が債務として認識できなかったとしてもやむを得ない事情がある(本人が保証債務として認識していない)ため、免責の効力は及ぶはずです。その旨を主張しましたが、債権者側の態度は強硬でした。
債権者側の主張をまとめると、
・たしかに、契約時に連帯保証人本人と面談した記録はないが、署名と実印、印鑑証明書の提出があったため、十分な証拠となる。
・契約後、主債務者からの返済が始まった際に、連帯保証人に電話で確認しているはず。
・契約後、主債務者からの返済が遅延した際(依頼者が自己破産するより以前)に、連帯保証人に手紙を送っているので、その時点で保証債務の存在を認識できたはず。
・したがって、自己破産するよりも前に、連帯保証人も保証債務の存在を認識できたはずであって、その時点で何ら争う姿勢を見せなかったことは、保証契約を追認したことにほかならない。その上で債権者一覧表に敢えて記載しなかったのだから、免責の効力は及ばない。
といったようなものでした。
依頼者本人とも相談し、現時点で債務不存在訴訟を提起することは可能であることを説明しましたが、そうなるとやはり多少なりとも費用をいただくことになってしまうため、この点を躊躇されていました。
お金が返ってくるような裁判であれば、事後的に回収額の中から報酬を頂くことも可能ですが、今回のようなケースでは、仮に裁判に勝ったとしても、依頼者本人の手元には1円も入ってきません。そのため、極力コストをかけずになんとかしてほしいというのは自然な感情だと思います。
そこで、ひとまずは内容証明郵便でこちらの主張を明確に相手に伝え、並行して交渉を続けていくことにしました。少なくとも、専門家が間に入って話し合いを続けている限りは、依頼者本人に厳しい督促がいくことはありません。万が一相手方が痺れを切らして裁判を起こしてきたとしても、こちらとして争う要素は十分にあります。
そして、ご本人からはひとまず内容証明郵便代の実費を頂き、正式に書面で主張を伝えて交渉していたところ、つい先日、債権者側から、
「先日の書面(内容証明)の内容と、そちら側の主張をふまえて再度内部で検討した結果、今回のケースに限っては請求を放棄します。」
との回答を得ました。
こちらとしては、最悪裁判になったとしても、勝訴の見込みは十分にあると思っていたので、別段驚きもしませんでしたが、依頼者本人に余計な費用負担を強いることなく解決できたのは良かったのではないかと思います。その旨を報告したところ、依頼者の方も非常に喜んでいました。
身に覚えのない借金の請求や、遥か昔に借りて長期間払っていなかった借金の督促、毎月の返済にお困りの方は、ぜひ1度専門家にご相談されてみることをお勧めします。