生前の相続税対策を

先日、大学時代の先輩方と久しぶりに宴席を囲む機会がありました。

 

近況報告や大学時代の昔話などに花が咲きましたが、ある先輩から、ご実家の相続に関する相談を受けました。

 

その先輩は、幸いにしてまだ両祖父母がご健在とのことですが、なにぶんお歳なのでいつ何があるかわからない、実家の不動産も全て祖父の名義になっているので、相続税のことも心配だとおっしゃっていました。

 

相続税については、平成27年から基礎控除の枠が4割も減額され、これにより、従前であれば納税対象にならなかった人たちであっても、今後は対象になってくる可能性があります。

 

特に問題なのは、相続財産のメインが不動産という場合です。一般的に、建物は経年劣化により、評価額自体も年々下がっていきますので、よほどの物件でなければ財産評価が相当高額というケースは稀です。これに対し、土地は近隣の発展開発などによって評価額が上昇することも多く、都市部に古くから土地をお持ちの方などは、かなりの財産評価額になる可能性があります。

 

相続財産が現金ないし換価が容易なもの(株券や保険など)であれば、最悪それらを換価して納税資金に充てることが可能です。ただし、不動産については、なかなかすぐには売れなかったり、そもそも先祖代々の土地で売りたくなかったりと、換価が困難なケースが数多くあります。そうなると、相続税の納税資金はそれ以外のところから捻出しなければなりません。

 

実際に、この先輩のケースでも、軽く話を聞いた限りでは、明らかに相続税の納税対象になりそうなケースでした。

 

これらの対策としては、不動産の年々贈与や配偶者控除を使って、相続対象財産をあらかじめ一部移転しておくことや、保険の見直しなどにより相続税納税資金を確保しておくこと、また、近年では教育資金贈与信託などの制度も設けられています。

 

これらを上手く活用することで、将来の相続税対策になることは間違いありません。

 

ただし、重要なことは、これらの多くは被相続対象者(上記のケースではお祖父様、お祖母様)がお元気なうちでないと手続きが難しいということです。もし仮にお祖父様、お祖母様が認知症などになり、判断能力がなくなってしまうと、不動産の名義を変えたり、財産を移転したりといったことは非常に難しくなってしまいます。

 

将来相続が発生した時に、

 
「あの時こうしていれば」

「もっといろいろ対策をしておけば良かった」

 

と思っても、後の祭ということになりかねません。

 
すでに発生した相続だけでなく、将来必ず発生する相続についてのあらかじめのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 
※相続税の具体的な税額や評価方法等についての詳細なご相談は、税理士の業務分野に該当する可能性があります。その場合は、当方で間違いのない先生をご紹介させて頂きますので、ご安心ください。

 

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異業種交流

先月から、成年後見や遺言の作成を主とする高齢者支援のための任意団体である、任意後見支援センター「あどみ」に参加させて頂いています。

この団体は、行政書士の先生方をメインとした任意団体なのですが、中には税理士や社会保険労務士、海事代理士、社会福祉士の方などもいらっしゃって(皆さん行政書士としても登録、活躍なさっている方々です)、非常に参考になる話を聞くことができます。私自身は、行政書士試験には合格しているものの、行政書士としての登録はまだ行っていませんが、現会長のご厚意で、先月から入会させて頂きました。

 

今週の定例会では、税理士の先生から、相続税についての講演をして頂き、参考になる部分も多々ありました。その他、実務での事例報告や、行政書士業務における報酬体系のあり方についても議論がなされ、司法書士としての立場からも、僭越ながら私見を述べさせていただきました。次回は相続と不動産登記をテーマにした講演を打診されており、どうなることかと今から緊張していますが・・・(苦笑)

 

定例会は、20名ほどの参加で、和気藹々とした雰囲気で行われていますので、若輩かつ新参の私でも気兼ねなく発言することができます。
行政書士と司法書士は、名称が似ていることもあり、一般の方にはよく混同されがちです(残念ながら、名称としての知名度は、司法書士は行政書士に劣っていると感じることもしばしば・・・)。また、「何が違うの?」といったご質問もよく受けます。違いをここで書くと長くなるので省略しますが、微妙に違うんです(苦笑)。ただし、隣接業種には違いないため、司法書士の業務を行う際に、行政書士の先生にお願いすることもあり、また、その逆もあります。司法書士と行政書士のダブルライセンスで事務所を運営されている方も大勢いらっしゃいます。

 
私は行政書士登録をしていないため、行政書士実務については未経験であり、このような会に参加させてもらって話を聞くだけで非常に参考になります。普段これだけ多くの行政書士の方々と接する機会もあまりなく、行政書士もそれぞれ得意分野が様々であるため、今後も多くの先生と、お互いにプラスになる関係を築いていければと思っています。

 
一般の方には、自分の相談が果たしてどの専門家の分野になるのかよくわからない、という方も大勢いらっしゃると思います。ご依頼、ご相談の中で、行政書士、税理士、社労士、弁護士など他業種の先生方のサポートが必要と判断した場合は、責任をもって間違いのない先生をご紹介させて頂きますので、安心してご相談ください。

 

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相続と不動産③相続不動産の評価を減らす方法(自宅)

相続財産に、自宅の土地が含まれている場合、一定の条件を満たせば、土地の相続税評価額を、なんと最大で80%引き下げることが可能です。

これは、「小規模宅地等の特例」という制度で、「特定居住用宅地等」に該当した場合、330㎡までが現在の対象になるというもので、その減税率は80%と、非常に効果の高いものです。

(例)

路線価=20万円、土地の広さ=200㎡の居住用土地の場合

通常の相続税評価額・・・20万円×200㎡=4000万円

↓特例を利用すると…

4000万円×80%=3200万円 が減額され、評価額は

4000万円-3200万円=800万円 となります。

 

いかに特例の効果が大きいかお分かりになるかと思います。減税額が非常に大きいため、この制度を利用することで、トータルとして相続税の対象ではなくなるというケースも多いのではないでしょうか?

 

では、この制度が利用できる要件をみていきましょう。

居住用の宅地であること

対象は、被相続人(亡くなった方)が直前まで住んでいた自宅の底地(=居住用宅地)です。

一定の要件に該当する親族が取得すること

以下のいずれかに該当すればOKです。

・宅地を取得する人が、配偶者である。

・宅地を取得する人が、同居の親族で、継続して保有かつ居住すること。

・宅地を取得する人が、生計を一にする親族で、継続して保有かつ居住すること。

・配偶者または同居の親族がいない場合、宅地を取得する人が、相続開始前3年以内に自分または配偶者が保有する家屋に居住したことがない親族で、継続して保有すること。

 

一見するとややこしいようですが、要するに、

被相続人が居住していた自宅を、親族が相続して引き続き居住する場合

において、利用できる可能性が高い制度であるということです。どうですか?こういわれると、比較的当てはまるケースは多いように思いませんか?

 

逆に考えると、(あまりないケースかもしれませんが)その家に居住しない相続人の名義にしてしまった場合、この特例は利用することができないということになります。

 

上記の通り、非常に利用価値の高い特例であるため、1つの考え方としては、この特例を念頭に置いて、問題なく特例が利用できるように相続させるための遺言をあらかじめ作成しておくということも、1つの相続税対策といえるかもしれません。

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相続と不動産②相続対象不動産の評価について

ホームページの記事でも紹介したように、不動産にはいくつもの「価格」があると言われます。

このうち、不動産(土地)に関する相続税を算出する際に用いられるのは原則として路線価です。

 

※路線価とは・・・基本的に、自分の不動産(土地)の目の前の道路には値段がつけられており(1㎡あたり○万円、といった感じ)、この価格は国税庁の路線価図で確認できます。この単価×土地の広さが、土地の相続税算出の際の評価額となります。

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(例)路線価=1㎡10万円、土地の広さ=200㎡

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→ 10万円×200=2000万円

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ただし、地方によっては、路線価が設定されていない地域もあります。

路線価が設定されていない地域においては、固定資産評価額に、各市区町村が定める評価倍率(宅地の場合、おおむね1.1倍とする地域が多いようです。)をかけたものを評価額とします。

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なお、路線価はあくまで土地を評価する際の基準なので、建物については固定資産評価額がそのまま評価額となります。建物については、消耗資産であるため、経年劣化とともに評価額は下がっていくことがほとんどですが、土地については、建物のように劣化するものではないため、必ずしも評価額は下がっていくとは限りません。むしろ、地価の上昇等により、評価額が上昇することもあり得ます。そのため、ある程度の広さの土地を所有している場合は、資産評価として決して無視できないような価格であることも多々あります。

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固定資産税は、評価額の1.4%を1年間4期分納が原則ですが、小規模住宅用地(200㎡までの住宅底地)については、6分の1とする軽減措置があるため、毎年の固定資産税はそこまで高額でなくても、評価額自体は思いのほか高い、という可能性もあります。

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なお、路線価にしろ固定資産評価額にしろ、実税価格よりも低い額となることがほとんどなので、一般的には、現金よりも不動産の方が相続税対策になる、と言われているのはこのためです。

 

※現金(預貯金)で2000万円所持したまま亡くなると、相続財産としての評価は丸々2000万円ですが、2000万円で不動産を購入していれば、その不動産の相続財産としての評価はそれよりも低い(例:1400万円)ことがほとんどなので、トータルとしての相続財産評価額を低く抑えることができます。

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路線価と固定資産評価額は、比較的簡単に調べることが可能です。

ご自身やご家族の相続に際して、相続税の対象となりそうなのか否かの目安にもなりますので、1度調べてみてはいかがでしょうか?

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※路線価と固定資産評価額を基準とするのは、あくまで相続税算出の際であって、遺産分割に際しての評価額は時価を基準とすることが多いので注意してください。

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相続と不動産①相続税控除の削減

新聞やニュースでも報道されていたため、ご存知の方も多いかと思いますが、平成27年1月1日以降の相続に関しては、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。
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※平成26年12月31日以前の相続
相続財産の額が、5000万円+(法定相続人の数×1000万円)を超えた場合のみ、相続税の対象。
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   ↓
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 平成27年1月1日以降の相続
相続財産の額が、3000万円+(法定相続人の数×600万円)超えてしまうと、相続税の対象。
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なんと、実に40%も控除額が削減されています。相続税の控除額を削減することで、高齢者の資産流通性を高める(「相続まで財産持っていたって、税金たくさんかかりますよ」ということで、生前の資産流通、移転を促す)ことが狙いと言われていますが、これにより、今まで相続税の対象ではなかった方々も、決して他人事とは言えなくなってきています。
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(例)相続財産:不動産4000万円+預貯金2000万円=6000万円
相続人:妻と子ども2人の計3人 というケース
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平成26年12月31日以前なら・・・
相続税控除額=5000万円+(1000万円×3)=8000万円 > 6000万円 のため、相続税はかからない。
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平成27年1月1日以降は・・・
相続税控除額=3000万円+(600万円×3)=4800万円 < 6000万円のため、相続税がかかる。
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とった具合です。
「相続税の心配なんか、一部の金持ちだけがすること 」とは、あながち言えなくなってきています。
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また、相続財産の中でも、特にその処理が難しいと言われるのが不動産です。
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単価が高く、必ずしも換価が容易ではない(売却にも手間暇、お金がかかる)上に、うかつに名義を変更することにより、多額の税金がかかってくる可能性があるため、その扱いは慎重に検討しなければなりません。
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相続と不動産についての論点は非常に複雑になりますので、次回以降、テーマを絞ってお伝えしたいと思います。
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次回は「相続対象不動産の評価について」です。
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