時効期間経過後の裁判

一般的に、貸金業者からの借入金は、最終取引日から5年を経過すると消滅時効にかかります。

 

これは、借りている側からすると、借金を返さなくて済むわけですが、5年経過すればただちに支払い義務がなくなるわけではありません

 

時効というのは、援用(えんよう)しなければ効力が生じません。援用というのは、言ってみれば相手方に対して「もう時効なので払いません」とハッキリと伝えることです。これをしなければ、10年経とうが15年経とうが、法律上の支払い義務は残ったままですから、請求・督促が来る可能性はあります。このこと自体は違法ではありません。
また、何年も経過しているうちに、合併や商号変更で会社の名前が変わったり、債権回収業者に債権が売却されたりして、当初お金を借りた業者とは全く違う名前の業者から督促の手紙が届くことも多々あります。
さらに気を付けなければならないことは、5年以上経過した後でも、貸金業者や債権回収業者から、支払いを求める裁判を起こされる可能性があるということです。繰り返しますが、時効の援用をしない間は、何年経っていても、督促が来たり裁判を起こされたりする可能性はあります。
裁判を起こされた場合、時効期間が経過していたとしても、きちんと裁判所で「時効なので払いません」ということを主張しないと、自動的に裁判に負けてしまう可能性があります。いったん裁判に負けてしまうと、その後で時効を主張するのは極めて難しく、最悪、裁判に負けてから10年経たないと、時効の主張ができなくなってしまいます。
聞き覚えのない業者名だからと言って、架空請求か何かと思って放っておくと、取り返しのつかないことにもなりかねません。参考までに、下記にいくつかの債権回収業者名を挙げておきます。これらの業者は、正式に国の許可を受けて債権回収業をおこなっておりますので、架空請求ではありません。督促が来た、裁判を起こされたという場合には、早急に専門家にご相談されてみることをお勧めします。
・アビリオ債権回収株式会社
・ニッテレ債権回収株式会社
・エー・シー・エス債権管理回収株式会社
・ジェーピーエヌ債権回収株式会社
・オリンポス債権回収株式会社
・エム・テー・ケー債権管理回収株式会社
・ティーアンドエス株式会社(いわゆるサービサーではありませんが、他社から債権譲渡を受けて回収業務をおこなっていることが多い会社です。)
※許可を受けたサービサーは他にも多数存在します。
参考URL 法務省:債権管理回収業者一覧
http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html

 

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倉敷国際トライアスロン

かなり久しぶりの更新になってしまいました・・・

 

春以降、なんだかんだとバタバタしていて、落ち着いてブログを書く余裕がありませんでした。今後はもう少し頑張って情報発信していきたいと思います。

 

 

さて、去る9月11日、地元岡山県で倉敷国際トライアスロン大会が開催されました。

 

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2年前のこの大会で初めてトライアスロンに出場したのですが、昨年はスケジュールの都合で参加できませんでした。2年ぶりの大会は、夏前の豪雨の影響で、バイクコースの一部で土砂崩れがあり、コース変更により当初の40kmから28kmに短縮というアクシデント?があったものの、天候にも恵まれ、なんとか完走することが出来ました。

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とはいえ、昨年末のロードバイクの事故以降、ほとんどまともに練習も出来ていなかったため、距離が短縮されたとは思えないしんどさ・・・順位も、2年前の41位から56位に落ちてしまいました。それでも、ひとまず事故も怪我もなく完走はできたため、ほっと一安心・・・

 

来年はなんとか練習を積んで、もう少し良い記録でゴールできるように頑張りたいと思います!!

 
それにしても、自分より10歳以上年上の人たちでも速い速い・・・まだまだ年齢を言い訳にするのは甘いと再認識させられました。

 

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遺産分割協議と遺言

今日は遺言についてのお話です。

 

故人がお亡くなりになって、相続人の方々で遺産をどう分けるかの話し合い(=遺産分割協議)をおこない、まとまりかけたところで、故人の自筆の遺言が発見された・・・

 
さて、このようなケース、実際になくはなさそうですよね?
このような場合、優先するのは遺産分割協議?それとも遺言??どちらになるのでしょう?

 
原則的に、きちんと様式を満たしている自筆証書遺言であれば、そちらが優先します。したがって、遺言書に記載された遺産を受け取ることのできる相続人・受贈者は、その遺言書に従って財産の名義変更や払い戻しをすることが出来ます。

 

ただし、遺言書と異なる内容での遺産分割協議は、それはそれで有効ですから、遺言書の存在を認めた上で、それとは異なる内容で相続人全員が同意すれば、そちらが優先します。

 

しかし、話し合いで決めたよりも、後で発見された遺言書には多くの財産がもらえるように書かれていた・・・なんて場合、その人から遺産分割協議に待ったがかかる可能性はありますよね?

 

例えば、父親が亡くなって、相続人は長男A、次男Bの場合、2人とも遺言書などないと思って、財産は半分半分で合意したところ、後になって「財産は4分の3を長男A、4分の1を次男Bに相続させる」という内容の遺言書が発見された場合、Aさんから、「遺言書の内容を知っていれば、半分半分などという協議はしなかった」といって、争いになる可能性があります。

 

Bさんからしても、「すでに財産を分け終わった後にそんなことを言われても・・・」となるかもしれませんし、場合によってはすんなりと遺産の再分配に応じられない可能性もあります。

 

そもそも、最初からそういった遺言書の内容がわかっていれば、Bさんも渋々ながら従ったかもしれませんが、後になって発見されたことにより、無用の争いに発展してしまう可能性も大いにあるのです。後々家族がもめないようにと思って残した遺言書が、これではよけいな争いを生んでしまい、元も子もありません。

 
また、こちらにも書いてある通り、自筆証書遺言には厳格な様式が定められており、様式を満たしていないものは、存在していても無効です。さらに、形式的な様式は満たしていても、財産の特定が不十分であったり、書き方が曖昧だったりすると、事実上、法務局や金融機関が財産の名義変更に応じない可能性も十分にあり得ます。

 
このような危険性を避けるためにも、遺言書は極力自筆ではなく、公正証書で残すべきです。公正証書遺言の場合、本人様が亡くなった後であっても、遺言書があるかどうかを検索することも可能ですから、この手続きを踏めば、後になって遺言書が発見されるということもありません。

 

また、作成の段階で文案作成に専門家が関与したり、公証人がチェックすることになりますので、内容が不明確であったり曖昧であるという可能性は限りなく低くできます。

 
遺言書は、手軽に作れても落とし穴がたくさんある自筆証書よりも、公正証書での作成を強くお勧めします。

 

 

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司法書士✖不動産

年明けからバタバタしていまして、更新がかなりおろそかになってしまいました。

 

さて、当事務所は株式会社HouseDesignと提携し、不動産関係業務も積極的に行っています。僕自身も、宅地建物取引士として、不動産関係業務にも従事しています。

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司法書士と不動産は切っても切れない関係にありますし、登記手続きだけにとどまらず、不動産の専門家として、トータルサポートできる事務所を目指しております。

 

 

・不動産のご購入、ご売却をご検討の方
・賃貸物件のお引越しをご検討の方
・相続した不動産に住み手がいないため、賃貸やご売却をお考えの方
・住宅ローン返済が負担で、賃貸物件への住み替えをご検討の方

 
などなど、不動産についてのご相談は、ぜひあおば司法書士事務所までご連絡ください!

 

 

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消滅時効を認めない業者②

年が明けてバタバタとしているうちに、あっという間に時間が経ってしまいました…

 

前回の記事で、消滅時効援用を認めない業者について書いていましたが、進展があったので書かせて頂きます。

 

その後、念のため取引履歴を取り寄せたところ、やはり最終取引日は2002年(平成14年)であり、その後の返済記録はありません。5年どころか、10年以上経過している計算になります。

 

さっそく業者に連絡して確認したところ、やはり債務名義の取得等の時効中断事由もないとのこと。それであれば時効援用を認めるべきなのですが、そこは前回と同様、

 

・本人が転居を繰り返した

・督促をしたくてもできなかった

・転居の旨の連絡もなく、誠意が感じられない

 

ことなどを理由に、時効援用は認めないの一点張りでした。
※いずれも、法律的には全く認められない主張です。

 

ご本人とは、債務不存在確認訴訟も視野に入れて話し合いをしていたのですが、それに先立って、業者に最後通帳のために連絡を入れました。後日訴訟において、業者の言い分を立証するためにも、会話内容は録音していることを相手に告げた上で、業者側の主張をはっきりと根拠を示して述べてほしいと伝えました。

 

10分以上話していましたが、結局法的根拠が示せないまま、会社として最終的な回答をするので時間がほしい、とされました。話の感触的に、これは一転して時効を認めるのではないかなと思っていたところ、つい先ほど連絡が。

 

「社内で検討した結果、今回は時効援用を認め、信用情報も、10日の時点で既に削除要請を出しておきました。」
とのこと。

 

当然と言えば当然の結果なのですが、最悪提訴も考えていただけに、ほっとする結末となりました。

 

また、信用情報も直ちに削除してくれたようで(どうも時効援用したからといって、通常は延滞情報がすぐに消えるわけではない、ということです)、この点については期待していた以上の対応です。こちらとしても何の異論もありません。

 

初めからこのような対応をしてくれていれば、こちらとしては何の文句もなかったわけですが…

 

なにはともあれ、提訴に至ることなく解決できてご本人にも良い報告ができそうです。
やれば勝てるとわかっている裁判でも、費用負担とかかる時間を考えると、しないですむにこしたことはないですから…

 

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消滅時効を認めない業者

先日ご依頼頂いていた件で、とある貸金業者に時効援用の内容証明郵便を送りました。

 

依頼者はもう10年以上一切返済をしておらず、信用情報を取得したところ、この業者が「延滞」情報を登録したままで、約定返済日は平成14年10月となっていました。

 
本人の記憶では、その間に訴訟提起されたこともないとのことから、おそらく消滅時効の援用が可能である旨説明し、当方からその旨の内容証明を送っていたところ、下記のような電話がかかってきました。

 

 

業者「先日先生から時効援用の内容証明を頂いていましたが、当社としては、この方を時効で処理はできません。」

 

私「?? というと?債務名義取得してるんですか?」

 

業者「いえ、それはありません。ただ、この方は過去、延滞後にこちらから連絡しても電話も一切出て頂けてなく、住所も転々としていたようです。」

 

私「そうかもしれませんね。で?」

 

業者「中には住民票を移転させず、居所を移していたこともあって、当方は本人に請求しようにもできなかったんです。よって、居所不明の期間があるので時効は認めません。」

 

私「?? おっしゃる意味がわかりません。」

 

業者「ですから、当方はなんとか連絡をとろうと努力した形跡があります。それでも本人が行方をくらますという悪質な対応のために、請求も回収もできなかったのです。だから、時効の援用は認めませんし、信用情報も削除するつもりはありません。」

 

私「??? いやいやいや、住所わかってたんならそもそも訴訟打てるでしょ?それやってないんでしょ?公示送達って知っていますか?おたくもプロなら、時効かかる前にやれることあったでしょ?それすらやらずに何言ってるんですか?」

 

業者「先生のおっしゃることはわかりますが、当方の主張は先ほど述べたとおりです。」

 

私「(意味不明・・・何言ってんだこいつ)居所不明だからと言って、時効が進行しないなどという法律はありませんよ?提訴しようと思えばできたはずでしょ?」

 

業者「こちらも私がずっと担当していたわけじゃありませんので。担当が変わったりする中で、それでも本人さんに連絡しようとした形跡はありますので。」

 

私「担当がどうとかはそちらの勝手な都合でしょ?本件には何の関係もないですね。」

 

業者「とにかく、本件についての時効は認めません。」

 

私「だったら今から回収のために提訴でもしてきますか?」

 

業者「本件を提訴するかどうかは社内で検討してから判断します。」

 

その後しばらく話しましたが、結局意味不明な主張を繰り返すばかりで、時効援用は認めないので信用情報も削除しないとのこと。

 

そもそも業者の言う、「居所不明だから時効が進行しない」という主張には何の根拠もありません(法律知ってんの?というレベルです)。

 

※よくTVドラマなんかで、「海外に逃亡している間は時効が進行しない」というエピソードが出てきますが、あれは刑事事件に限った話で、民事事件の場合、海外にいようが住所がわからなかろうが、時効は進行します

 
居所不明の相手に対しても、訴訟を提起することは可能ですし、それで勝訴判決をとっていれば、誰の目から見ても時効の中断は明らかです。それをやらずにおいて、意味不明な根拠で時効消滅を認めないなど、もはや言っていることはろくでもない悪質業者と一緒です。挙句の果てには感情的になってガチャ切りに近い形で受話器を置く始末。これがいまだに銀行グループを謳って「●ー●ー●」などというブランドで大々的に貸付を行っている大手業者の対応だというのですから、呆れてものも言えません。

 

本当に権利が消滅していないと思うのであれば、社内で検討も何も、すぐに提訴してくればいいのです。それに含みを持たせているのは、結局提訴したところで、こちらが時効援用すれば勝ち目がないのがわかっているからです(というか、法律をある程度知っていれば普通はわかります)。

 

にもかかわらず、時効援用を認めない、などと言ってくるのは、ただの嫌がらせとしか思えません。いずれにしても、信用ある業者のすることではないです。

 

こんな意味不明な主張を認めるわけにはいきません。いずれ債務不存在確認と、信用情報誤記載についての損害賠償請求を併せて訴訟提起することになるでしょう。
信用情報機関への登録内容については、「加盟会社は信用情報機関に当該利用者の信用情報を提供するに当たり,利用者との間のクレジット契約に付随して,信義則上,正確を期し,誤った情報を提供する等して,当該利用者の信用を毀損しないよう配慮すべき義務があり,この義務に違反すれば,債務不履行責任を負う」とする裁判例が存在します。

 

 

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ふるさと納税のお話④

前回は、ふるさと納税における所得税のメリットについて説明しました。

 

所得税の計算においては、「寄付した額-2000円」を課税所得計算の際に控除することで、最終的には所得税が「(寄付した額-2000円)×所得税率(5%~45%)」分安くなりますよ、という、ちょっと間接的なメリットでした。

 

これに対し、住民税の方では、もっと直接的なメリットがあります。
②住民税のメリット
実はふるさと納税の大きなメリットは、所得税よりも住民税の方にあります。「ふるさと納税で納めた(寄付をした)金額-2000円」の大部分を、翌年の住民税から丸々差し引くことができるのです。

 

前回の住民税の計算方法を簡単に振り返ってみると、

 
①収入-経費=所得

 

所得-各種控除=課税所得

 

課税所得×10%=住民税

 
というものでした。
この中で、ふるさと納税で納めた金額は、その大半を住民税から直接差し引くことができます。つまり、ふるさと納税で納めた分、ほぼそっくりそのまま住民税の額から差し引くことができる、というものです。
ここで、「その大半」とか「ほぼそっくりそのまま」という、若干微妙な表現をしているのは、「所得税の方でメリットがあった部分(前回の例でいう寄付額5万円-2000円の10%、つまり4800円)を除いた部分」を差し引けるというシステムだからです。

 

(例)
(ふるさと納税前の)課税所得が250万円のAさん
250万円(課税所得)×10%(課税所得税額に応じた税率)=25万円(住民税額)

Aさんは、何もしなければ25万円の住民税を払わなければなりません。
この場合、Aさんが5万円ふるさと納税すると、「(ふるさと納税分-2000円)×90%」を住民税から差し引くことで、住民税は

 

25万円-4万3200円=20万6800円

となります。4万3200円分、納める住民税が少なくなるのです。

 

所得税が4800円安くなり、住民税が4万3200円安くなれば、トータルでは4万8000円分丸々税金が安くなることになります。
所得税のメリットとしては、計算途中の所得税から差し引くことができる「所得控除」であるのに対し、住民税のメリットとしては、最終的に納める住民税額から差し引くことができる「税額控除」であり、こちらの方がイメージはしやすく、また、差し引ける額も大きいといえます。
ただし、気を付けなければならないのは、住民税の税額控除は、住民税額の20%という上限がある、とうことです。

 

つまり、

 

「来年住民税が10万円きそうだから、10万円分ふるさと納税すれば、住民税はほとんど納めなくていい!それで10万円分お礼の品がもらえればお得!!」

 

とはならないわけです。
住民税が10万円であれば、ふるさと納税による住民税額控除は2万円が上限です

つまり、前回からの例でいくと、所得税率が10%の範囲内(課税所得が195万円~330万円)の人であれば、
「寄付した額-2000円」のうち、10%分は所得税が下げられ、90%分は住民税が下げられますよ(合計すると、「寄付した額-2000円」の全額分税金下がりますよ)。ただし、住民税の控除は、住民税の2割という上限があるから気を付けてね、ということです。
結果的には、 何もしなくても翌年に払わなければならない税金(所得税、住民税)のうち、「寄付した額-2000円」分は差し引きましょう、とるわけです。

 

そして、ふるさと納税にはいろいろなお礼の品が用意されていることが多いので、

 

何もしなければ普通に税金払って終わり。

  ↓しかし、

ふるさと納税しておけば、「その額-2000円」は税金払わなくていい。
  +
お礼の品ももらえる。

  ↓つまり、

実質2000円でお礼の品がもらえる。

 

という図式が出来上がるわけです。
そうは言っても結局いくら寄付すればいいのかよくわからない、という方は、「来年請求がくるであろう住民税額(課税所得×10%)の約2割」ぐらいをめどに寄付されてみてはどうかと思います。それであれば、控除の上限を超えてあまりメリットがなかった、ということもないかと思います。

 
長々と書かせて頂いたふるさと納税シリーズはこれで終わりです。

 

若干事例や税率を単純化している部分はありますが、絶望的に間違っているということはないかと思いますので、ご興味がある方は参考にして頂ければと思います。

 

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ふるさと納税のお話③

前回までのお話で、

 

・ふるさと納税には、所得税と住民税の2段階のメリットがある。
・所得税と住民税の計算方法の仕組み

 

について、簡単に説明しました。

 

今日はそれをふまえて、実際にふるさと納税をすると、2つの税金にどう影響があるのかを説明します。
①所得税におけるメリット
ますは所得税におけるメリットですが、これは、課税所得を計算する際に、「ふるさと納税で納めた(寄付をした)金額-2000円」を、寄付金控除として控除することができる、というものです。

 

前回の所得税の計算方法を簡単に振り返ってみると、
①収入-経費=所得

所得-各種控除=課税所得

③(課税所得×税率)-控除額=所得税
というものでした。

 

この中で、ふるさと納税で納めた金額は、寄付金控除として「各種控除」に含めることができます。

 

つまり、控除額が大きくなることでその分課税所得が少なくなり、最終的な所得税の額も少なくなります。

 

ポイントは、納めた分丸々税金が安くなるのではなく、納めた分税金計算の基礎となる金額(=課税所得)が少なくなり、それに伴って結果的に税金の額も下がる、という、ちょっと間接的なメリットであることです(これを「所得控除」といいます)。

 

そのため、例えば5万円納めた場合に、いくら所得税額が下がるのかは、すぐにはわかりにくいのですが、結論から言うと、「納めた額×最終的な所得税の税率(5%~45%)」分が所得税から下がります。

 
(例)
(ふるさと納税前の)課税所得が250万円のAさん
250万円(課税所得)×10%(課税所得税額に応じた税率)-9万7500円(控除額)=15万2500円(所得税額)

 
Aさんが5万円ふるさと納税すると、「ふるさと納税分-2,000円=4万8000円」は課税所得から差し引けるため、課税所得が245万2000円となります。
245万2000円(課税所得)×10%(課税所得税額に応じた税率)-9万7500円(控除額)=14万7700円(所得税額)

 
となり、所得税の差額は4800円((寄付した5万円-2,000円)×課税所得に応じた税率10%)となります。
※計算を単純にするために、復興特別所得税はひとまず無視しています。

 
なんだ、5万円も寄付しても、得になるのはたった4,800円じゃあ、45,200円は損じゃないか、たとえお礼の品もらえたって割に合わない!と思った気の早いアナタ(僕です)。大事なのは、この後の②住民税のメリットの方なのです。
住民税のメリットについては次回説明します。

 

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ふるさと納税のお話②

さて、前回に引き続きふるさと納税のお話です。

 

ふるさと納税には所得税と住民税の2つの税金面でのメリットがあります。

 

この2つのメリットを理解するために、まずは所得税と住民税が、そもそもどのような計算に基づいて課せられているのかを、簡単に説明します。

 

<所得税と住民税の計算方法>

所得税・住民税の計算方法は、実はある程度似通っています。

(サラリーマンの場合)
① 年間収入(いわゆる額面金額)-経費(※)=所得
※サラリ-マンの場合、経費の部分は「給与所得控除」と呼ばれ、年間収入に応じて定額で決まっています。

② ①で求めた所得-各種控除(※)=課税所得
※基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険控除、住宅ローン控除、寄付金控除など。

(自営業者の場合)
① 年間売上-自営業で実際にかかった経費=所得

② ①で求めた所得-各種控除=課税所得
まずは、上記の計算で「課税所得」と呼ばれる金額を算出します。
こうしてみると、サラリーマンも自営業者も、計算方法はほとんど変わりません。違うのは、①で差し引くことのできる「経費」の部分だけです。
要は、サラリーマンの場合、経費にできる額は、収入に応じて初めから決められているのに対し、自営業の場合は、実際に自営業でかかった分を経費にしますよ、ということです。そのために、自営業の場合は、何にいくら使ったのかがわかる「領収書」がとても大事になります。領収書がなければ、本当に支払ったお金かどうかがわかりませんからね。
そして、上記の計算で求めた課税所得に対して、一定の税率をかけたものが、所得税、住民税として、翌年の課税されることになります。
※厳密にいうと、所得税の計算のための課税所得算出の際の基礎控除の額(38万円)と、住民税の計算のための課税所得算出の際の基礎控除の額(33万円)が多少違ったり、という細かい差はありますが、ここでは省略します。
簡単に言うと、

 

課税所得×税率(5%~45%)-控除額(金額に応じて定額)=所得税

課税所得×約10%=住民税

となります。
所得税を算出するための、最後の税率(5%~45%)は、課税所得の額によって異なります。課税所得が大きい(≒たくさん稼いでいる)人ほど、税率も高くなります。これがいわゆる超過累進課税と呼ばれるものです。

 

さて、所得税と住民税の具体的な計算方法がわかったところで、実際にふるさと納税が、どこでどのように影響してくるのかを説明します。
思っていたより長くなってしまったので、続きは次回に。

 

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ふるさと納税のお話①

更新がだいぶご無沙汰になってしまいました。

 

事務所を開業して初めての年末ということもあり、日常業務に加えての帳簿付けや確定申告の準備等に追われていました。今年は3月まで勤務していた分の給与所得もあるので、年間所得の概算を出して、来年どれぐらいの税金の請求がくるのかを、そろそろシミュレーションしておかなければなりません。
正直あまり気の進む作業ではないですが・・・

 

そんな中で、税金対策の一環(?)として、今さらながらふるさと納税をしてきました。

 

お恥ずかしい話、昨年までふるさと納税は1度もしたことがありません。周囲からは、「得だからやった方がいい」とは聞いていたのですが、イマイチその仕組みを理解しておらず、また、結局のところ、一体どれぐらい納税すればいいのかもよくわからなかったため、なんとなくスルーしてきていました。どうせ生命保険料控除とかと一緒でしょ?たいしてメリットもなさそうだし・・・ぐらいにしか考えていませんでした(まことに残念なオツムです)。

 

今年からは確定申告も必要とのことで、少しでも何かの得になるのであれば、と、自分なりに仕組みを勉強してから、目安の金額を出して納税してきました。まぁ、正直なところ、いわゆる「お礼の品」目当てで・・・というところもなきにしもあらずです(というかほぼそれ目当てです(苦笑))。

 

せっかくなので、備忘録的にも、その仕組みをざっくりと書いておこうと思います。

 

 

<ふるさと納税の仕組み>
①全国の自治体を選んで、納税(一応、形式上は「寄付」ですが)することができる。
②「ふるさと」という名称ですが、別に地元でなくてOK。全国どこでも大丈夫。
③納めた(寄付した)金額に応じて、その地域の特産品などの「お礼の品」を受け取ることができる。
④納めた(寄付した)金額は、所得から控除することができるので、翌年に払う所得税、住民税がその分減額される。
とまぁ、これぐらいはなんとなくわかってはいたつもりですし、みなさんもご存じだと思います。③の「お礼の品」がお肉だったりカニだったりワインだったり…HPを見ているだけで、あまりに数が多すぎて目移りしてしまいますが、問題は④の税金の減額です。

 

これが一体いくら寄付すればいくら減額されるのか、どれぐらいお得なのか、というのが、イマイチわかっていなかったんですよね。というよりも、そもそも理解する気がなかったというか…わかってしまえばそんなに難しい話ではありませんでした。ちょっともったいないです。

 

ふるさと納税を行うと、税金面では2段階のメリットがあります。
「所得税でのメリット」と、「住民税でのメリット」です。
この2つのメリットを理解するためには、まずは所得税と住民税が、そもそもどのような計算に基づいて課せられているのかを、簡単に知っておく必要があります。
司法書士は税金のプロではありませんので、あまり細かい話は省略しますが、皆さんも絶対に知っておいて困ることはないお話なので、漢字や数字のアレルギーを忘れて読んでいただきたいと思います。

 

・・・と思いましたが、ちょっとバタバタしてきたので続きは次回にします。すいません・・・

 

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