嬉しいお手紙を頂きました。

灘区シマブンビルにて、司法書士会主催で定期的に行っている無料相談会(http://www.bbplaza.com/2490)にお越し頂いたご夫婦から、わざわざ直筆でお手紙を頂きました。

 

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こちらの相談会は、毎月第2、第4土曜日の13:00~16:00で定期開催されており、ご予約は不要、相談料も無料です。
20名弱の司法書士が当番制で対応しており、その場で直接ご依頼を頂くことはできません(相談のみ)が、ご希望に応じて司法書士の名簿をお渡ししたりしています。

 

この方は、わざわざ名簿から当事務所を調べてお手紙を下さったようです。

 

限られた時間内でのご相談になりますので、どれだけお役に立てたかはわかりませんが、文面を拝見する限り、参考になった部分もあったようで一安心です。

 

こういった相談会などでのご相談はもちろん、事務所でのご相談も、必ずしも全てが事務所での受任(すなわち、事務所の経済的利益。有り体に言えば、儲け。)につながるわけではありません。中には、そもそも司法書士の専門分野ですらないものもあります。

 

しかし、そういった受任に至らない相談であっても、ご相談内容の中から問題点を整理し、可能であれば解決のための方向性をアドバイスし、必要に応じてその分野の専門家を紹介したりといった、できる限りの対応はさせて頂いております。

 

少なくとも、電話やご来所で時間を割いてご相談頂いている方に、

 

「電話してみて良かった」
「相談してみて良かった」

 

と思って頂けるような対応を心がけています。

 

その意味では、このようなお手紙は、ある意味では業務の受任以上に嬉しかったりもするものです。

 

今後もこういった評価を頂けるよう、精進していきたいと思います。

 

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休眠担保権の抹消②

前回からの続き

 

数十年前の登記簿上の住所から、現地を調べて訪問したところ、抵当権者と同じ苗字の表札を発見し、抵当権者もしくはその家族が居住している可能性が高いと考えられたため、早速その住所宛に手紙を出してみました。

 

が、手紙を出してしばらくしても一向に連絡はありません。再度書留で送ってみましたが、不在・保管期間経過で戻ってきてしまいました。

 

仕方ないので再度現地を訪問し、直接呼び鈴を鳴らしてみましたが、全く反応はなし。ふと見ると、横の郵便ポストにはかなり郵便物が溜まっており、中に人がいる気配もありません。

 

仕方なく、隣家の方に尋ねてみたところ、1年ほど前までは住んでいたが、おそらく亡くなられた?ためそれ以降誰も住んでいない、とのこと・・・

 

これは予想外でした。抵当権者もしくはその家族が住んでいれば、その方に事情を説明し、仮に抵当権者が亡くなっていたとしても、家族構成を確認して、相続人の方に協力をお願いすれば手続できると思っていましたが・・・1年前に亡くなられたというのが抵当権者本人なのかそのご家族の方なのかはわかりませんが(この住所地で抵当権者の住民票は取得できなかったことから、抵当権者本人ではない可能性が高い)、いずれにしてもこの時点での手掛かりがなくなってしまいました。
その後、裁判手続きによるしかないかと思い、その準備を進めながら、できる限りの調査も並行して継続していたところ、偶然にも、運よくこの抵当権者の一族と思しき方と繋がることができ、奇跡的に、その方を頼りに抵当権者の家族関係を明らかにすることができました。結果、やはり抵当権者の方も30年以上前に亡くなられており、その子どもも10年ほど前に他界していて、こちらの相続関係もなかなか複雑だったのですが・・・
最終的には、相続人全員の方と直接会って事情の説明ができ、手続に協力してもらえることととなりました。
当然、当時の事情などは誰も知らず、抵当権の権利書などの書類もなかったため、相続人の方々全員と直接面談し、本人確認情報を作成し、書類には実印を押してもらって印鑑証明も頂かなければなりません。そもそもちゃんと完済しているという証拠すらないのですから、なかなかデリケートなお話でしたが、どうにか全員にご納得頂き、書類を作成して登記申請したところ、特に補正もなくすんなりと完了してくれました。
なかなかシビアな案件でしたが、無事完了してほっとしています。

 

抵当権の抹消は、費用もさほど掛からない(実費数千円、専門家に依頼しても通常は1~2万円程度)、そんなに困難な手続ではありませんが、時間が経つとかなり複雑化する可能性があります。特に、個人での融資に担保権を設定している場合などは、相続が絡むと大変な手間になることもあります。そして、どんなに大昔の担保権であっても、登記上記録が残っている以上は、まず間違いなくまともには売ることはできません。

 

たかが抹消、されど抹消。手続にお困りの場合は、登記の専門家である司法書士にご相談されることをお勧めします。

 

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休眠担保権の抹消①

先日ご依頼頂いていた、相続登記と個人の抵当権抹消登記が、およそ半年がかりで無事終了しました。

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こちらの不動産、所有名義は昭和30年代に亡くなられた方のまま、さらにそこに、昭和35年に設定した個人の方の名義の抵当権が残ったままという、若干複雑なものでした。

 

相続登記の方は、名義人の方の子ども孫も亡くなっていましたので、現在の相続人の方の数も多く、これはこれで大変だったのですが、相談者の方が相続人のうちの1人ですので、そこから戸籍をたどっていき、連絡を取ってなんとか皆様の承諾をもらって名義変更できました。
が、問題は個人名義で設定された抵当権の方でした。

 

そもそも担保設定自体が60年も前の話ですので、当然相談者の方は当時の事情もわからず、抵当権者の名前を聞いても全く心当たりはありません。手掛かりと言えば、登記簿上に記載された住所と氏名のみ。しかし、それでもなんとかこの担保を消さなければ売ることもできません。
このような、数十年前に設定されて、現在ではすでに効力はない(完済していたり、時効にかかっていたりで、返済の義務はない)と思われるものの、登記上は権利が残ったままになっているものを総称して「休眠担保権」と呼びます。この休眠担保権を抹消するための方法はいくつかあり、この分野だけで書籍が発刊されるほど、実はやっかいな問題でもあります。
抵当権者が金融機関の場合、合併や解散で、当時の会社がなくなっていたとしても、商業登記簿謄本などから会社の変遷をたどることができますし、そこから当時の清算人の方や、現在の存続会社に連絡を取って抹消に協力してもらうことが可能です。場合によっては、裁判所に特別代理人の選任申立を行ってから抹消します。
ところが、抵当権者が個人の場合、そもそも相手方を探し出すことすら困難です。手掛かりが担保設定時の住所と氏名しかない上、住民票は、その方がそこから住所を移転させたり、亡くなったりすると、原則5年で廃棄されてしまうため、何十年も前の住所氏名だけでは、住民票を取得することもほぼできません。昔は、住所イコール本籍地としていた方も多いため、登記簿上の住所をもとに戸籍を取得することもできますが(戸籍は住民票よりも保管期間が長いため、時間が経っても保管されている可能性が高い)、本籍地と住所が違う場合はこれも無理です。
そうなると、登記簿上の住所地である現地を訪問し、本人もしくはその家族(子孫?)が居住していないかなどを実際に調べる必要があります。その結果、完全に行方不明であれば、抵当権者行方不明を理由に、供託金を収めて抹消行方不明の抵当権者を相手取って訴訟を提起して抹消などの方法によることとなります。
①の場合、ざっくりいうと、当時から現在までの利息・遅延損害金を全額供託(=法務局に預け入れ)しなければなりません。
設定当時の金額が数百円とか千円程度であれば、上記を計算しても大した金額にはならないのですが(物価や貨幣価値の変動は考慮しません)、今回は、設定金額が●十万円であったため、この方法だと軽く数百万円を供託しなければならないこととなり、事実上困難でした。
そこで、登記簿上の住所地(現在は存在しない番地であったため、現在の番地表記を調査した上で)を訪問してみたところ、そこには抵当権者と同じ苗字の表札が・・・家自体もかなり年季が入っており、相当以前から住まわれていたのではないかと思われます。これは、抵当権者もしくはその家族が現在でも居住している可能性が高いと思われました。その場合、仮に抵当権者が亡くなっていても、相続人の方々に協力してもらえれば、抹消手続きは可能です。一筋の光が見えたと思ったところ・・・
長くなりましたので次回に続きます。

 

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法定相続情報証明制度と家系図

平成29年5月から、法定相続情報証明制度がスタートしてから約1年強が経過しました。依頼者の方にそれとなく聞いてみることはあるのですが、まだまだ浸透してきたなという感じは受けませんが・・・

(もっとも、この1年以内にお身内の方での相続などを経験された方でなければ、そもそも必要となる機会もないので、当然といえば当然かもしれません。)

制度の内容としては、相続が発生した場合、法務局に対して、必要な戸籍等と申請書類を提出することで、法務局が認証印付の証明書(=法定相続情報)を発行してもらえる、というものです。

現物はこんな感じです。

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法務局で戸籍等関係書類を確認した上で、家族関係(厳密には、法律的な相続関係)を証明してくれるため、相続に伴う様々な手続きの中で、今までは戸籍の束をその都度提出しなければならなかったもの(預金の解約・名義変更、証券会社の相続手続き、保険会社への請求など)において、その代わりにこの証明書1枚を提出すればOK、ということになっています。

一般的に、相続関係を明らかにするための戸籍謄本というのは、最低でも5~6通、通常は10通以上というケースが多く、下手すると数十通にのぼることなどもあります。

今までは、亡くなった方が複数の預金口座を持っていた場合などは、これらの原本及びコピーを提出し、担当部署で内容の精査を行ったうえで、問題なければ手続きが進み、後日原本を返却してもらうという作業を、それぞれの金融機関ごとに繰り返し行わなければなりませんでした。

この制度を利用すれば、相続関係については、法務局がいわば「お墨付き」を与えてくれるわけですから、金融機関に対して戸籍の束を提出する必要はなく、その手間はかなり軽減されます。
※法務局でこの制度を利用する(お墨付きをもらう)ためには戸籍は必要になりますので、戸籍自体を取得する必要がなくなった、というわけではありません。

 

また、各金融機関内部で、今までは、提出された戸籍の束をもとに、相続関係に間違いがないかどうかをきちんと確認するのに時間がかかっていましたが、この証明書があれば、その確認の手間も省けますから、金融機関での手続き自体の時間も短縮されると思います。

ただ、注意しなければならないのは、これはあくまで法律上の「相続関係」を明らかにするものであって、「家系図」ではありません。

何が言いたいかと言うと・・・

例えば下記のようなケースを考えてみましょう。

相続関係図(ブログ用)

 

 

 

 

 

 

 

 

亡くなったのはXさんで、Xさんは生涯独身であったため、配偶者もお子さんもいませんでした。

また、Xさんのご両親は2人ともすでに亡くなっており、Xさんのきょうだい5人(A~Eさん)のうち、姉のCさん以外の4人は、同じくお子さんがいなくて、Xさんより先に亡くなっているとします。

この場合の、いわゆる家系図、というのは、上記の図のようなものをイメージされるかと思います。
※実際に、我々が相続登記の際に作成する相続関係説明図は上記のような感じです。

しかし、このケースで、「法定相続情報」として作成されるものはこれ↓です。

法定相続情報(ブログ用2)

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごくシンプルです。

A、B、D、Eの4人は、そもそも記載すらされません。
※記載した書類を法務局に提出すると、削除するように言われます。
これは、A、B、D、Eの4人は、Xさんに子どもがいない場合は相続人にはなるのですが、Xさんよりも先に亡くなっており、かつその子ども(Xさんから見た甥、姪)もいないため、「Xさんの相続関係に無関係」だからというのが理由です。

 

つまり、上記のケースでは、Xさんの相続人は、姉であるCさんのみであり、その2人の関係性がわかる最低限の情報しか記載されない、というわけです。

どうですか?実際には6人きょうだいであったのに、2人しか記載されていないものを「家系図」と言われても違和感がありませんか?

 

中には、この制度のことを、「法務局がお墨付きを与えてくれた家系図」のように理解されている方がいらっしゃるのですが、必ずしもそうではない、ということがお分かり頂けたと思います。

 

とはいえ、制度自体は事案によっては使い勝手の良いものですし、何より、この証明書の発行自体は無料です。5通とっても10通とっても無料です。

不動産の名義変更(相続登記)が必要になるケースであれば、ついでに取得しておけば他の手続きがラクになりますし、不動産がないようなケースでも申請は可能ですか
ら、もらっておけば他の手続きに使うことは可能です。

相続登記が不要の場合(亡くなった方名義の不動産がない場合)であっても、ご依頼頂ければ戸籍の収集から証明情報の申請、取得まで、司法書士が行うことは可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

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立て続けに相続放棄?


今回は相続放棄のお話です。

 

亡くなられた方に生前借金があった場合は、借金の支払い義務も相続されるため、相続人の方には借金の支払い義務が発生します。家庭裁判所で、相続放棄の手続きをとれば、これらの借金についての支払い義務はなくなります。

 

ただし、場合によっては、相続放棄をすることによって、繰り上がりで別の方が相続人となる場合があります(というよりも、多くの場合、そうなってしまいます)。
さらに、その繰り上がりで相続人となった方が、相続放棄の手続きをする前に亡くなられた場合、もともとの借金の支払い義務が、再度舞い込んでくる可能性があるので注意が必要です。

 
今回ご相談頂いたケースは、まさに上記のような事案でした。

 
(事案内容)
・亡くなられた方:Aさん(夫)
・当初の相続人:Aさんの妻Bさん、Aさんの子C

 

①Aさんの死亡後、Bさん及びCが相続放棄

②①の相続放棄により、繰り上がりでAさんの父親であるDさんが相続人に

③Dさんが相続放棄をすることなく死亡

④再度Cが相続人になり、再び相続放棄手続きが必要に

 
これは、相続に関する下記の2つの大きなポイントが重なったために発生した事案でした。

 

(1)相続放棄による繰り上がり相続
基本的に、亡くなられた方に子ども(養子含む)がいる場合、子どもは必ず相続人となります。
しかし、その子どもが全員相続放棄をした場合、今度は亡くなった方の親が繰り上がりで相続人となります。
※両親ともに先に亡くなっている場合は、きょうだいが相続人となります。

 

(2)代襲相続
亡くなった方に子ども及び孫がいて、子どもの方が先に亡くなっている場合は、その子どもが相続するはずだった権利義務は、代わりに孫が相続します。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
上記の事案のように、先に父親の相続を放棄していたとしても、祖父の代襲相続人になります
※父親の妻(上記の例でいうBさん)は代襲相続人にはなりません。

 
これにより、今回のケースでは、Cさんは短期間に、同じ借金のために、2度も相続放棄の手続きをとらなければならなくなりました。
Dさんが亡くなる前に相続放棄をしてもらっていれば、このようなことにはならなかったのですが・・・

 
相続放棄の手続きにおいては、ほとんどの場合において、放棄することによって代わりに相続人となる方が存在します。
事案のようなことがないよう、可能であれば、その方々にも連絡を取って、必要に応じて相続放棄の手続きをおこなって頂くことをお勧め致します。

 

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民事信託(家族信託)について

皆様、遅ればせながら明けましておめでとうございます。

 

昨日は、兵庫県青年司法書士会主催の民事信託・家族信託に関する研修会に参加してきました。

 

週末の金曜日の、業務後3時間という長丁場の研修にも書かwらず、多数の同業の先生が出席されており、やはり関心の高い分野であることを再認識しました。

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先般、NHKなどでも特集が組まれたこともあり、民事信託・家族信託に関する認知度も、徐々にではありますが高まりを見せつつります。

 

しかし、なにぶん「信託」という表現がとっつきにくく、また、信託銀行などのイメージから、「高額財産を所有している方にしか関係ない」と思われていることなどから、まだまだ身近な制度とは言いにくいでしょう。

 

実際、我々専門家の間でも、どのようなケースに家族信託が適しているのか、契約の際に注意すべきこと、当事者の方それぞれの権利・義務、税務上の問題点など、日々様々な議論が行われている分野です。

 
とはいえ、従来の相続・老後対策(遺言や後見など)だけでは不十分であった部分を、信託契約を用いることでカバーできる可能性は高いのではないかと思います。

 

信託だけですべてを解決できる事案というのもなかなかないとは思いますが、選択肢の1つであったり、他の制度と複合的に組み合わせることで、よりご本人様やご家族の希望の沿う形で、また、将来の争いを防ぐことが実現できるのではないかと思います。

 
当事務所でも、家族信託を1つの選択肢として、相続対策の様々なご相談を承っております。

 

ご相談は無料ですので、制度の説明や注意点、ご自身のケースに合わせたアドバイス等、ご希望の方はご遠慮なくお問い合わせください。

 

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相続登記からの売却・換価分割

今日は明石の相続物件の調査に行ってきました。

 

今年に入って所有者の方が亡くなられ、生涯未婚でお子さんがいなかったため、ご兄弟の方が相続人となりました。

 

しかし、ご兄弟の方々もすでにご高齢で、もちろんそれぞれの生活もありますので、不動産を相続しても処理に困るとのこと。

 
そこで、不動産は売却し、諸経費等を差し引いて、現金という形で相続人に分配する換価分割という方法で進めることになりました。売却手続きもこちらにお任せ頂けるとのことで、私の所属する不動産会社の社長と現地確認へ。

 
室内にはまだかなりの物が残っており、故人の生前の生活の様子が目に浮かぶような状況でした。

 
建物自体は築30年以上経過していますが、鉄骨造のしっかりした建物で、立地は悪くはないため、解体前提で売るのか、建物を残してリフォームでいくのかでかなり評価が分かれることになりそうです。

 
相続人の方々は、あまり金額にはこだわらない、とのことでしたが、そうは言ってもご家族の遺された財産。きちんと評価し、有効活用して頂ける方に買って頂ければ、それに越したことはありません。なるべく早く、相続人の方々のご納得頂ける方を頑張って探したいと思います。

 

当方では、空き家、相続物件などについて、必要な登記手続きからご売却手続き、収益物件としての活用なども含めて、総合的にサポートさせて頂きます。

 
不動産のことでお悩みの方は、ぜひ1度ご相談ください。

 

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遺産分割協議と遺言

今日は遺言についてのお話です。

 

故人がお亡くなりになって、相続人の方々で遺産をどう分けるかの話し合い(=遺産分割協議)をおこない、まとまりかけたところで、故人の自筆の遺言が発見された・・・

 
さて、このようなケース、実際になくはなさそうですよね?
このような場合、優先するのは遺産分割協議?それとも遺言??どちらになるのでしょう?

 
原則的に、きちんと様式を満たしている自筆証書遺言であれば、そちらが優先します。したがって、遺言書に記載された遺産を受け取ることのできる相続人・受贈者は、その遺言書に従って財産の名義変更や払い戻しをすることが出来ます。

 

ただし、遺言書と異なる内容での遺産分割協議は、それはそれで有効ですから、遺言書の存在を認めた上で、それとは異なる内容で相続人全員が同意すれば、そちらが優先します。

 

しかし、話し合いで決めたよりも、後で発見された遺言書には多くの財産がもらえるように書かれていた・・・なんて場合、その人から遺産分割協議に待ったがかかる可能性はありますよね?

 

例えば、父親が亡くなって、相続人は長男A、次男Bの場合、2人とも遺言書などないと思って、財産は半分半分で合意したところ、後になって「財産は4分の3を長男A、4分の1を次男Bに相続させる」という内容の遺言書が発見された場合、Aさんから、「遺言書の内容を知っていれば、半分半分などという協議はしなかった」といって、争いになる可能性があります。

 

Bさんからしても、「すでに財産を分け終わった後にそんなことを言われても・・・」となるかもしれませんし、場合によってはすんなりと遺産の再分配に応じられない可能性もあります。

 

そもそも、最初からそういった遺言書の内容がわかっていれば、Bさんも渋々ながら従ったかもしれませんが、後になって発見されたことにより、無用の争いに発展してしまう可能性も大いにあるのです。後々家族がもめないようにと思って残した遺言書が、これではよけいな争いを生んでしまい、元も子もありません。

 
また、こちらにも書いてある通り、自筆証書遺言には厳格な様式が定められており、様式を満たしていないものは、存在していても無効です。さらに、形式的な様式は満たしていても、財産の特定が不十分であったり、書き方が曖昧だったりすると、事実上、法務局や金融機関が財産の名義変更に応じない可能性も十分にあり得ます。

 
このような危険性を避けるためにも、遺言書は極力自筆ではなく、公正証書で残すべきです。公正証書遺言の場合、本人様が亡くなった後であっても、遺言書があるかどうかを検索することも可能ですから、この手続きを踏めば、後になって遺言書が発見されるということもありません。

 

また、作成の段階で文案作成に専門家が関与したり、公証人がチェックすることになりますので、内容が不明確であったり曖昧であるという可能性は限りなく低くできます。

 
遺言書は、手軽に作れても落とし穴がたくさんある自筆証書よりも、公正証書での作成を強くお勧めします。

 

 

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生前の相続税対策を

先日、大学時代の先輩方と久しぶりに宴席を囲む機会がありました。

 

近況報告や大学時代の昔話などに花が咲きましたが、ある先輩から、ご実家の相続に関する相談を受けました。

 

その先輩は、幸いにしてまだ両祖父母がご健在とのことですが、なにぶんお歳なのでいつ何があるかわからない、実家の不動産も全て祖父の名義になっているので、相続税のことも心配だとおっしゃっていました。

 

相続税については、平成27年から基礎控除の枠が4割も減額され、これにより、従前であれば納税対象にならなかった人たちであっても、今後は対象になってくる可能性があります。

 

特に問題なのは、相続財産のメインが不動産という場合です。一般的に、建物は経年劣化により、評価額自体も年々下がっていきますので、よほどの物件でなければ財産評価が相当高額というケースは稀です。これに対し、土地は近隣の発展開発などによって評価額が上昇することも多く、都市部に古くから土地をお持ちの方などは、かなりの財産評価額になる可能性があります。

 

相続財産が現金ないし換価が容易なもの(株券や保険など)であれば、最悪それらを換価して納税資金に充てることが可能です。ただし、不動産については、なかなかすぐには売れなかったり、そもそも先祖代々の土地で売りたくなかったりと、換価が困難なケースが数多くあります。そうなると、相続税の納税資金はそれ以外のところから捻出しなければなりません。

 

実際に、この先輩のケースでも、軽く話を聞いた限りでは、明らかに相続税の納税対象になりそうなケースでした。

 

これらの対策としては、不動産の年々贈与や配偶者控除を使って、相続対象財産をあらかじめ一部移転しておくことや、保険の見直しなどにより相続税納税資金を確保しておくこと、また、近年では教育資金贈与信託などの制度も設けられています。

 

これらを上手く活用することで、将来の相続税対策になることは間違いありません。

 

ただし、重要なことは、これらの多くは被相続対象者(上記のケースではお祖父様、お祖母様)がお元気なうちでないと手続きが難しいということです。もし仮にお祖父様、お祖母様が認知症などになり、判断能力がなくなってしまうと、不動産の名義を変えたり、財産を移転したりといったことは非常に難しくなってしまいます。

 

将来相続が発生した時に、

 
「あの時こうしていれば」

「もっといろいろ対策をしておけば良かった」

 

と思っても、後の祭ということになりかねません。

 
すでに発生した相続だけでなく、将来必ず発生する相続についてのあらかじめのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 
※相続税の具体的な税額や評価方法等についての詳細なご相談は、税理士の業務分野に該当する可能性があります。その場合は、当方で間違いのない先生をご紹介させて頂きますので、ご安心ください。

 

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元気なうちの「終活」

今日は、以前から遺言書作成のご相談をいただいている依頼者の方と一緒に、葬儀会社との打ち合わせに行ってきました。

この方は、不幸にも3年ほど前にご子息を亡くしてしまい、以後おひとりで暮らしています。ごきょうだいはいらっしゃいますが、すでに亡くなっている方や、もう何十年も会っていない方たちで、決して近い関係ではありません。

 
幸いにもお身体はお元気で、毎日のように近所の気の合うご友人たちと食事に行ったり出かけられたりされていますが、いかんせんご年齢のこともあり、自分の今後について、周りに迷惑をかけたくない、とのことでご相談に来られました。

 

ご本人としては、わずかばかりの財産しかないが、もし自分に何かあったら、その時に残っているお金や預貯金は、身の回りで本当に良くしてくれている友人のうち数人で分けてほしい、とのことでした。また、ご自身のご葬儀についても希望があり、最終的には、ご子息と同じ方法で供養してほしいとのことでした。

 

この方の場合、このまま万が一のことがあれば、相続人はごきょうだいの方たちになります。もし、ごきょうだいが先に亡くなられている場合にはその子どもたち、つまりご本人からみると甥、姪になります。そのため、ご本人の希望を叶えるためには、遺言を作成していただくしかありません。きちんとした遺言書があれば、ごきょうだいや甥、姪には遺留分はありませんから、相続財産は希望通りにご友人たちに引き継ぐことができます。

 

このようなご希望はあらかじめ常日頃からご友人には伝えていらっしゃったので、再度ご友人の方々にその旨(受遺の意思があるかどうか)の確認をした上で、相続財産をご友人に遺贈するという内容の公正証書遺言を作成することとなりました。

 
また、葬儀については、あらかじめ葬儀社と綿密に打ち合わせをした上で、喪主となってくれるご友人の方と、死後の事務委任契約を締結する方向で話がまとまりそうです。

 

死後の事務委任契約とは・・・
通常の委任契約の場合、委任者(ここでいう依頼者ご本人)が亡くなると、委任契約は効力を失ってしまうため、ご自身の死後のこと(葬儀、法要など)をお願いしていても、法律的には協力を持ちません。その点、死後の事務委任契約は、あらかじめ委任者の死亡によって効力を失わない旨を定めておくことで、ご自身の亡くなられた後のことについても、契約としての法的効力を持たせることが可能です。

 
葬儀社と葬儀の規模や段取り、費用の打ち合わせが終わり、おおよその目途がついたとのことで、依頼者の方が「これで安心した。いつでも思い残すことなく逝けますわ。」と言って晴れやかに笑っていらっしゃったのが印象的でした。

 

 

遺言や相続といった、「死」にまつわる話題は、とかくタブー視されがちです。ご本人ではなく、ご家族の方から「本当はきちんと遺言書を書いておいてほしいんだけど…」といった相談も数多くあります。しかし、その多くは、「こちら(家族)の方からは言い出しにくいので…」という結論に至ってしまいます。たしかに、僕も自分の親に向かって、「そろそろ遺言でも書いといてくれ」とはなかなか言いにくいので、難しいところではありますが・・・

 
遺言や死後の事務委任は、言ってしまえばご本人様の人生最後の希望、お願いです。元気なうちにそれを形にしておけば、もし万が一のことがあっても、ご本人様はもとより、残されたご家族の方も本当に助かるケースがほとんどなのです。そして、万が一のことがなく、その後も健康で長生きされるのであれば、それに越したことはありません。言ってしまえば、これらのいわゆる「終活」は、人生の保険のようなものです。元気なうちに準備しておくことが大切で、「いつでもできる」と思っているうちに、いざ病気になった後に「保険に入ろう」「入っておけばよかった」と思ってももう手遅れ、ということも十分に考えられるのです。

 
そして、単純なようで意外に複雑な相続。きちんとした準備をしておかなければ、なかなかご本人様の思うようにはいかないケースは本当に多いのです。

 

「うちは親族仲がいいから大丈夫」
「身内で文句を言う奴なんかいないから」

 

と思っていても、実際にお金や生活が絡んでくると、なかなかそれまでの関係通りにはいかないものです。

 

使い古された言い方ですが、「相続」が「争続」にならないために、事前の備えをきちんと行い、安心して余生を過ごされてほしいと思います。

 

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