法定相続情報証明制度と家系図

平成29年5月から、法定相続情報証明制度がスタートしてから約1年強が経過しました。依頼者の方にそれとなく聞いてみることはあるのですが、まだまだ浸透してきたなという感じは受けませんが・・・

(もっとも、この1年以内にお身内の方での相続などを経験された方でなければ、そもそも必要となる機会もないので、当然といえば当然かもしれません。)

制度の内容としては、相続が発生した場合、法務局に対して、必要な戸籍等と申請書類を提出することで、法務局が認証印付の証明書(=法定相続情報)を発行してもらえる、というものです。

現物はこんな感じです。

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法務局で戸籍等関係書類を確認した上で、家族関係(厳密には、法律的な相続関係)を証明してくれるため、相続に伴う様々な手続きの中で、今までは戸籍の束をその都度提出しなければならなかったもの(預金の解約・名義変更、証券会社の相続手続き、保険会社への請求など)において、その代わりにこの証明書1枚を提出すればOK、ということになっています。

一般的に、相続関係を明らかにするための戸籍謄本というのは、最低でも5~6通、通常は10通以上というケースが多く、下手すると数十通にのぼることなどもあります。

今までは、亡くなった方が複数の預金口座を持っていた場合などは、これらの原本及びコピーを提出し、担当部署で内容の精査を行ったうえで、問題なければ手続きが進み、後日原本を返却してもらうという作業を、それぞれの金融機関ごとに繰り返し行わなければなりませんでした。

この制度を利用すれば、相続関係については、法務局がいわば「お墨付き」を与えてくれるわけですから、金融機関に対して戸籍の束を提出する必要はなく、その手間はかなり軽減されます。
※法務局でこの制度を利用する(お墨付きをもらう)ためには戸籍は必要になりますので、戸籍自体を取得する必要がなくなった、というわけではありません。

 

また、各金融機関内部で、今までは、提出された戸籍の束をもとに、相続関係に間違いがないかどうかをきちんと確認するのに時間がかかっていましたが、この証明書があれば、その確認の手間も省けますから、金融機関での手続き自体の時間も短縮されると思います。

ただ、注意しなければならないのは、これはあくまで法律上の「相続関係」を明らかにするものであって、「家系図」ではありません。

何が言いたいかと言うと・・・

例えば下記のようなケースを考えてみましょう。

相続関係図(ブログ用)

 

 

 

 

 

 

 

 

亡くなったのはXさんで、Xさんは生涯独身であったため、配偶者もお子さんもいませんでした。

また、Xさんのご両親は2人ともすでに亡くなっており、Xさんのきょうだい5人(A~Eさん)のうち、姉のCさん以外の4人は、同じくお子さんがいなくて、Xさんより先に亡くなっているとします。

この場合の、いわゆる家系図、というのは、上記の図のようなものをイメージされるかと思います。
※実際に、我々が相続登記の際に作成する相続関係説明図は上記のような感じです。

しかし、このケースで、「法定相続情報」として作成されるものはこれ↓です。

法定相続情報(ブログ用2)

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごくシンプルです。

A、B、D、Eの4人は、そもそも記載すらされません。
※記載した書類を法務局に提出すると、削除するように言われます。
これは、A、B、D、Eの4人は、Xさんに子どもがいない場合は相続人にはなるのですが、Xさんよりも先に亡くなっており、かつその子ども(Xさんから見た甥、姪)もいないため、「Xさんの相続関係に無関係」だからというのが理由です。

 

つまり、上記のケースでは、Xさんの相続人は、姉であるCさんのみであり、その2人の関係性がわかる最低限の情報しか記載されない、というわけです。

どうですか?実際には6人きょうだいであったのに、2人しか記載されていないものを「家系図」と言われても違和感がありませんか?

 

中には、この制度のことを、「法務局がお墨付きを与えてくれた家系図」のように理解されている方がいらっしゃるのですが、必ずしもそうではない、ということがお分かり頂けたと思います。

 

とはいえ、制度自体は事案によっては使い勝手の良いものですし、何より、この証明書の発行自体は無料です。5通とっても10通とっても無料です。

不動産の名義変更(相続登記)が必要になるケースであれば、ついでに取得しておけば他の手続きがラクになりますし、不動産がないようなケースでも申請は可能ですか
ら、もらっておけば他の手続きに使うことは可能です。

相続登記が不要の場合(亡くなった方名義の不動産がない場合)であっても、ご依頼頂ければ戸籍の収集から証明情報の申請、取得まで、司法書士が行うことは可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

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立て続けに相続放棄?


今回は相続放棄のお話です。

 

亡くなられた方に生前借金があった場合は、借金の支払い義務も相続されるため、相続人の方には借金の支払い義務が発生します。家庭裁判所で、相続放棄の手続きをとれば、これらの借金についての支払い義務はなくなります。

 

ただし、場合によっては、相続放棄をすることによって、繰り上がりで別の方が相続人となる場合があります(というよりも、多くの場合、そうなってしまいます)。
さらに、その繰り上がりで相続人となった方が、相続放棄の手続きをする前に亡くなられた場合、もともとの借金の支払い義務が、再度舞い込んでくる可能性があるので注意が必要です。

 
今回ご相談頂いたケースは、まさに上記のような事案でした。

 
(事案内容)
・亡くなられた方:Aさん(夫)
・当初の相続人:Aさんの妻Bさん、Aさんの子C

 

①Aさんの死亡後、Bさん及びCが相続放棄

②①の相続放棄により、繰り上がりでAさんの父親であるDさんが相続人に

③Dさんが相続放棄をすることなく死亡

④再度Cが相続人になり、再び相続放棄手続きが必要に

 
これは、相続に関する下記の2つの大きなポイントが重なったために発生した事案でした。

 

(1)相続放棄による繰り上がり相続
基本的に、亡くなられた方に子ども(養子含む)がいる場合、子どもは必ず相続人となります。
しかし、その子どもが全員相続放棄をした場合、今度は亡くなった方の親が繰り上がりで相続人となります。
※両親ともに先に亡くなっている場合は、きょうだいが相続人となります。

 

(2)代襲相続
亡くなった方に子ども及び孫がいて、子どもの方が先に亡くなっている場合は、その子どもが相続するはずだった権利義務は、代わりに孫が相続します。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)といいます。
上記の事案のように、先に父親の相続を放棄していたとしても、祖父の代襲相続人になります
※父親の妻(上記の例でいうBさん)は代襲相続人にはなりません。

 
これにより、今回のケースでは、Cさんは短期間に、同じ借金のために、2度も相続放棄の手続きをとらなければならなくなりました。
Dさんが亡くなる前に相続放棄をしてもらっていれば、このようなことにはならなかったのですが・・・

 
相続放棄の手続きにおいては、ほとんどの場合において、放棄することによって代わりに相続人となる方が存在します。
事案のようなことがないよう、可能であれば、その方々にも連絡を取って、必要に応じて相続放棄の手続きをおこなって頂くことをお勧め致します。

 

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相続登記からの売却・換価分割

今日は明石の相続物件の調査に行ってきました。

 

今年に入って所有者の方が亡くなられ、生涯未婚でお子さんがいなかったため、ご兄弟の方が相続人となりました。

 

しかし、ご兄弟の方々もすでにご高齢で、もちろんそれぞれの生活もありますので、不動産を相続しても処理に困るとのこと。

 
そこで、不動産は売却し、諸経費等を差し引いて、現金という形で相続人に分配する換価分割という方法で進めることになりました。売却手続きもこちらにお任せ頂けるとのことで、私の所属する不動産会社の社長と現地確認へ。

 
室内にはまだかなりの物が残っており、故人の生前の生活の様子が目に浮かぶような状況でした。

 
建物自体は築30年以上経過していますが、鉄骨造のしっかりした建物で、立地は悪くはないため、解体前提で売るのか、建物を残してリフォームでいくのかでかなり評価が分かれることになりそうです。

 
相続人の方々は、あまり金額にはこだわらない、とのことでしたが、そうは言ってもご家族の遺された財産。きちんと評価し、有効活用して頂ける方に買って頂ければ、それに越したことはありません。なるべく早く、相続人の方々のご納得頂ける方を頑張って探したいと思います。

 

当方では、空き家、相続物件などについて、必要な登記手続きからご売却手続き、収益物件としての活用なども含めて、総合的にサポートさせて頂きます。

 
不動産のことでお悩みの方は、ぜひ1度ご相談ください。

 

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遺産分割協議と遺言

今日は遺言についてのお話です。

 

故人がお亡くなりになって、相続人の方々で遺産をどう分けるかの話し合い(=遺産分割協議)をおこない、まとまりかけたところで、故人の自筆の遺言が発見された・・・

 
さて、このようなケース、実際になくはなさそうですよね?
このような場合、優先するのは遺産分割協議?それとも遺言??どちらになるのでしょう?

 
原則的に、きちんと様式を満たしている自筆証書遺言であれば、そちらが優先します。したがって、遺言書に記載された遺産を受け取ることのできる相続人・受贈者は、その遺言書に従って財産の名義変更や払い戻しをすることが出来ます。

 

ただし、遺言書と異なる内容での遺産分割協議は、それはそれで有効ですから、遺言書の存在を認めた上で、それとは異なる内容で相続人全員が同意すれば、そちらが優先します。

 

しかし、話し合いで決めたよりも、後で発見された遺言書には多くの財産がもらえるように書かれていた・・・なんて場合、その人から遺産分割協議に待ったがかかる可能性はありますよね?

 

例えば、父親が亡くなって、相続人は長男A、次男Bの場合、2人とも遺言書などないと思って、財産は半分半分で合意したところ、後になって「財産は4分の3を長男A、4分の1を次男Bに相続させる」という内容の遺言書が発見された場合、Aさんから、「遺言書の内容を知っていれば、半分半分などという協議はしなかった」といって、争いになる可能性があります。

 

Bさんからしても、「すでに財産を分け終わった後にそんなことを言われても・・・」となるかもしれませんし、場合によってはすんなりと遺産の再分配に応じられない可能性もあります。

 

そもそも、最初からそういった遺言書の内容がわかっていれば、Bさんも渋々ながら従ったかもしれませんが、後になって発見されたことにより、無用の争いに発展してしまう可能性も大いにあるのです。後々家族がもめないようにと思って残した遺言書が、これではよけいな争いを生んでしまい、元も子もありません。

 
また、こちらにも書いてある通り、自筆証書遺言には厳格な様式が定められており、様式を満たしていないものは、存在していても無効です。さらに、形式的な様式は満たしていても、財産の特定が不十分であったり、書き方が曖昧だったりすると、事実上、法務局や金融機関が財産の名義変更に応じない可能性も十分にあり得ます。

 
このような危険性を避けるためにも、遺言書は極力自筆ではなく、公正証書で残すべきです。公正証書遺言の場合、本人様が亡くなった後であっても、遺言書があるかどうかを検索することも可能ですから、この手続きを踏めば、後になって遺言書が発見されるということもありません。

 

また、作成の段階で文案作成に専門家が関与したり、公証人がチェックすることになりますので、内容が不明確であったり曖昧であるという可能性は限りなく低くできます。

 
遺言書は、手軽に作れても落とし穴がたくさんある自筆証書よりも、公正証書での作成を強くお勧めします。

 

 

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任意後見契約とは?

先日、後見制度の研修のために滋賀まで行ってきました。

 

時代の流れか、後見に関するご相談はとても増えてきていると思います。先日も、任意後見契約についてのご相談を頂きました。

 

任意後見契約とは、ご自身がまだ元気なうちに、将来的に認知症などで自身の判断能力が低下した際に、後見人となってくれる人と結んでおく契約です。実際に認知症が進んでしまい、判断能力が低下してしまった後に家庭裁判所に申し立てる、いわゆる法定後見とは若干異なります。

 

このあたりは一般の方には若干わかりにくく、誤解されている部分も多いため、任意後見契約のポイントについて書いていこうと思います。

 
元気なうちに契約することが必要
任意後見契約は、あくまでご本人様と後見人候補者との「契約」です。そのため、契約当事者であるご本人様、後見人候補者が、十分に契約内容を理解して合意することが必要です。例えば、ご本人様の認知症が進行してしまっていて、契約内容を十分にご理解いただけないような場合は、任意後見契約を結ぶことはできません。

 

契約は公正証書で
任意後見契約は必ず公正証書を作成しておこなうことが必要になります。公正証書作成の際には、公証役場で、ご本人様がしっかりと契約内容を理解しているかなどの確認がなされますので、ご本人様が契約内容をご理解できないような状況の場合は、公証人からストップがかかる可能性があります。

 
後見人は誰でもOK
任意後見契約の場合、後見人候補者は誰でも構いません。ご家族だけではなく、信頼できるご友人や専門家など、ご本人様が将来の財産管理を安心して任せられる人を自由に選ぶことができます。これに対し、家庭裁判所が関与する法定後見の場合、後見人候補者の希望を出すことはできますが、必ずしも候補者がそのまま選任されるとは限りません。

 
契約が発効するのは判断能力が低下してから
任意後見契約は、契約と同時に発効はしません。契約時はあくまで契約を結ぶだけで、将来的にご本人様の判断能力が低下したのちに、家庭裁判所に対して後見監督人の選任を申し立て、それによって効力が発生します。そのため、任意後見契約を結んだものの、最期までお元気で過ごされた場合には、任意後見契約が発効することはないということになります。

 
後見監督人の選任が必要
任意後見契約の場合、その発効に際して、家庭裁判所に申し立てをし、後見監督人を選任してもらう必要があります。この後見監督人とは、文字通り後見人を監督する立場にあり、定期的に後見人から後見業務の報告を受けるなど、いわば後見人のお目付け役のような存在です。後見人と親しい人が監督人になったのでは、お目付け役の意味がありませんから、後見監督人は好きに選ぶことはできず、家庭裁判所が選任します。ご家族の中で、「私がおばあちゃんの後見人になるから、あなたが監督人になってね」というのは不可能ということです。

 

 

任意後見契約の場合、契約を結んでから、実際にその契約が発効するまでには、年単位の時間がかかることも珍しくありません。また、最期まで判断能力が衰えることなく、はっきりとした意思能力をお持ちのままお亡くなりになるような場合(いわゆる「ピンピンコロリ」型)には、この契約は結果的には必要がなかった、ということもあり得ます。いわば、「転ばぬ先の杖」のような契約です。
1度契約を結んでも、ご本人様がお元気なうちは、内容を変更することも可能です。将来を安心して過ごすために、ぜひ1度ご検討されてはいかがでしょうか?

 

 

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生前の相続税対策を

先日、大学時代の先輩方と久しぶりに宴席を囲む機会がありました。

 

近況報告や大学時代の昔話などに花が咲きましたが、ある先輩から、ご実家の相続に関する相談を受けました。

 

その先輩は、幸いにしてまだ両祖父母がご健在とのことですが、なにぶんお歳なのでいつ何があるかわからない、実家の不動産も全て祖父の名義になっているので、相続税のことも心配だとおっしゃっていました。

 

相続税については、平成27年から基礎控除の枠が4割も減額され、これにより、従前であれば納税対象にならなかった人たちであっても、今後は対象になってくる可能性があります。

 

特に問題なのは、相続財産のメインが不動産という場合です。一般的に、建物は経年劣化により、評価額自体も年々下がっていきますので、よほどの物件でなければ財産評価が相当高額というケースは稀です。これに対し、土地は近隣の発展開発などによって評価額が上昇することも多く、都市部に古くから土地をお持ちの方などは、かなりの財産評価額になる可能性があります。

 

相続財産が現金ないし換価が容易なもの(株券や保険など)であれば、最悪それらを換価して納税資金に充てることが可能です。ただし、不動産については、なかなかすぐには売れなかったり、そもそも先祖代々の土地で売りたくなかったりと、換価が困難なケースが数多くあります。そうなると、相続税の納税資金はそれ以外のところから捻出しなければなりません。

 

実際に、この先輩のケースでも、軽く話を聞いた限りでは、明らかに相続税の納税対象になりそうなケースでした。

 

これらの対策としては、不動産の年々贈与や配偶者控除を使って、相続対象財産をあらかじめ一部移転しておくことや、保険の見直しなどにより相続税納税資金を確保しておくこと、また、近年では教育資金贈与信託などの制度も設けられています。

 

これらを上手く活用することで、将来の相続税対策になることは間違いありません。

 

ただし、重要なことは、これらの多くは被相続対象者(上記のケースではお祖父様、お祖母様)がお元気なうちでないと手続きが難しいということです。もし仮にお祖父様、お祖母様が認知症などになり、判断能力がなくなってしまうと、不動産の名義を変えたり、財産を移転したりといったことは非常に難しくなってしまいます。

 

将来相続が発生した時に、

 
「あの時こうしていれば」

「もっといろいろ対策をしておけば良かった」

 

と思っても、後の祭ということになりかねません。

 
すでに発生した相続だけでなく、将来必ず発生する相続についてのあらかじめのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 
※相続税の具体的な税額や評価方法等についての詳細なご相談は、税理士の業務分野に該当する可能性があります。その場合は、当方で間違いのない先生をご紹介させて頂きますので、ご安心ください。

 

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2日連続で公証役場へ

昨日は地元倉敷の公証役場へ、今日は神戸の公証役場へ行ってきました。

 

内容はそれぞれ、公正証書遺言と死後事務委任契約書の作成でした。遺言の方は、財産の内容の聞き取りから、具体的な分配方法、そのための手段などを何度も打ち合わせさせて頂いた上で、ようやく昨日公正証書の作成に至りました。

 

死後事務委任契約の方も、実際の葬儀法要の内容に至るまで、できる限りご本人様の希望通りになるように調整をさせて頂きました。

 

いずれも、遺言執行者及び死後事務の受任者としてご指定頂きましたので、本当の意味での私の業務はご本人様亡き後、まだ何年も先のことになると思いますが、ひとまずはきちんとした書面が完成し、ご本人様も一安心されていました。

 

また、別件で、任意後見契約もしくは公正証書遺言の作成のご相談も頂きました。こちらは果たしてどのような方法によるのがベストなのか、もう少し考える必要がありそうです。

 

このあたりのいわゆる『終活』に絡む契約や書面作成などは、万人に対してベストな方法というのは存在しません。その人の置かれている状況や財産の多寡、家族関係や身近で頼れる人がいるかどうかなど、様々な事情を勘案した上で、ご本人様の希望を叶えるためにはどのような方法がベストなのかを、その都度検討していく必要があります。一概に、

 

「遺言さえ残せば大丈夫」
「後見契約さえ結べば大丈夫」

 

とは言うことはできません。

ご本人様の納得できる書類を残すために、何度でもご相談に応じさせて頂き、必要に応じて他の専門家や専門機関とも連携してお手伝いをさせて頂きます。

 
ご自身の将来こと、ご高齢のご家族のこと、ご心配事がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

 

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死後事務委任契約のために公証役場へ

先日、死後事務委任契約書を公正証書で作成するための打ち合わせで、神戸公証センターに行ってきました。

 

死後事務委任契約とは、主にお1人暮らしの高齢者などが、元気なうちに、ご自身が亡くなられた後の身の回りの事務処理を依頼しておく契約です。

 

遺言と似ていますが、遺言は単独行為(遺言を残す人が1人でできる行為)であるのに対し、死後事務委任契約はその名の通り「契約」ですので、相手方が合意していることが必要です。その分、相手方には契約を履行する義務が生じます。

 

例えば、遺言で「私の葬儀はこのようにしてほしい」と記載しても、これはあくまで希望・お願いのレベルであって、法的な拘束力はありません。これに対し、死後事務委任契約で契約した内容については、契約の相手方はそれを履行する義務を負うことになります。

 

また、遺言が主に遺産の分配方法などについて用いられるのに対し、死後事務委任契約は、その名の通り事務処理についての契約であることがほとんどです。例えば、現在の借家の解約手続き家財道具の処分病院代の支払い葬儀、納骨等の手配役所への届け出などがこれに当たります。その他、飼っているペットをこうしてほしい、これこれの友人たちには自分が亡くなったことを知らせてほしい、など、契約ですのでその内容は自由に決めることができます。

 

もちろん、身近な親族の方や、ご同居されている方がいて、わざわざ契約などという堅苦しいことをしなくても、ある程度自分の望み通りにしてくれる、という場合はあまり必要ではありません。それに対し、完全なお1人暮らしで、親族も、疎遠であったり遠方に住んでいたりして、あまり煩わしいことを頼めない、という場合は、信頼できる方とこういった契約を結んでおくと安心です。

 

今回お手伝いさせていただく方も、お歳は80代ですがまだまだお元気、毎日のように外出もされている方ですので、この契約が発効するのは当分先のことになると思います。ただ、ご家族に先立たれているために、万が一の際にあれこれとお願いできる人が身近にいません。周りのご友人たちも高齢ですので、自分に何かあった際に迷惑をかけるようなことにはしたくないとのことで、今回の契約をご希望されました。

 

ご自身の葬儀についても、ある程度こうしたいというイメージをお持ちであったため、あらかじめ近くの葬儀社と打ち合わせた上でプランを作成し、それに足りるだけの費用をあらかじめ預託しておくということになりました(ご本人曰く、自分が持ってたら全部使ってしまうので、とのこと)。

 

公証人の先生には、あらかじめ作成しておいた契約書案を確認していただき、問題ないとのことでしたので、早ければ来週にでも、ご本人様と一緒に公証役場に出向き、正式な公正証書にすることができそうです。ひとまずご本人様はこれで一安心されると思うので、余計な心配事はなくして、これからまだまだお元気で長生きしていただきたいと思います。

 

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相続と担保抹消

以前に債務整理事件の処理をさせて頂いた依頼者の方から、ご自宅の相続登記のご依頼を頂きました。

 

対象不動産はご自宅の土地と建物ですが、建物はお父様名義で、土地はお祖父様名義のままになっているとのこと。
お祖父様は昭和60年頃に、お父様も平成15年に亡くなっており、いまだ名義変更がなされていないとのことでした。

 

建物部分の相続に関しては、相続関係がシンプルなので特に問題はなさそうでしたが、土地については、お父様が6人きょうだいであったこと、お父様以外にも伯父、叔母にすでに亡くなっている方がいることもあって、相続人の数が10名を超えてしまっています。中には直接連絡がとりづらい方もいらっしゃるとのことで、ひとまず建物部分の相続登記の準備を進めながら、土地の相続については他の相続人にコンタクトを試みることになりました。

 

不動産の参考資料をお持ちだったので、こちらでインターネットから現在の登記簿謄本を確認してみたところ、概ねご本人様のご記憶通りでしたが、建物部分には、30年近く前に設定した抵当権がそのまま残っていることが判明しました。債務者はお父様の名前になっています。

 

ご本人様に事情を確認したところ、お父様が亡くなってからしばらくして、ご本人様が分割で支払って完済しているとのことでした。その際に、金融機関から担保抹消の書類を受け取ったか確認するも、はっきりとは覚えていないとのことです。

 

このような場合に考えられるのは2パターンで、1つ目は、そもそも金融機関から担保抹消書類を受け取っていないというケースです。この場合、金融機関内部で、抹消書類一式が保管されている可能性が高いので、事情を説明すれば、書類一式を交付してもらえます。今回のように、相続が絡んでいる場合であっても、相続人の方から請求することが可能です。

 

もう1つは、ローン完済時に、金融機関から担保抹消書類を受け取っているにも関わらず、それを紛失してしまっているケースです。抹消書類の中の、解除証書や代表者事項証明書といった書類は、金融機関に掛け合って再発行してもらうことが可能です。ただし、抵当権設定契約証書(担保における権利書のようなもので、法務局の受付印が押されているもの)は再発行することができませんので、これを紛失している場合には、若干手続きが変わってきてしまいます。

 

ご本人様はこのあたりのご記憶が不確かでしたが、金融機関に確認してみたところ、まだ書類は保管されているとのことでした。相続関係書類と、抹消書類発行の申請書を提出すれば、一式受け取ることが可能とのことで、ご本人様も一安心です。

 

今回は、建物がそこまで新しくなかったため、相続登記と担保の抹消登記を併せて、税金込みで約10万円ほどで済みそうです。その旨を伝えたところ、「えっ、そんなものでできるんですか!?」との反応が。どうも、もっと何十万円もかかると思っていたご様子。

 

司法書士や弁護士に何か手続きを依頼すれば、少なくても数十万円かかる、といったようなイメージをお持ちの方は大勢いらっしゃいます。たしかに複雑な案件や、事情によっては費用が加算されることもありますが、さほど複雑ではない相続登記などは、報酬部分は10万円もかからないケースがほとんどです(登録免許税という税金部分は、不動産の評価額によって異なります)。

 

ある程度のご状況(相続人の数や対象不動産の数など)がわかれば、概算の費用をお伝えすることも可能ですので、お見積りのみのご依頼でもお気軽にご相談下さい。

 

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公正証書遺言と証人

先週は公正証書遺言の作成相談のために、地元岡山県に行ってきました。

 

相談者は私の遠縁にあたる方なのですが、お子さんがおらず、奥様に先立たれてしまったため、今後ご自身に万が一のことがあった場合に、きょうだい、甥、姪が相続人になります。しかし、法定相続人の数も多く、中には財産を譲りたくない人物もいるということで、遺言の作成を勧めていました。

 

きょうだいや甥、姪については、法律上遺留分が認められていませんので、きちんとした遺言さえ残しておけば、本人の遺志通りに財産を承継させることが可能です。
相続財産は主に預貯金と不動産ですが、不動産は合計で9筆ほどあり、農地も含まれています。また、建物は数筆未登記であったりと、今後の処理についあれこれと検討しなければならないことが多くありました。
ずっと田舎暮らしで、法律などの難しい話は苦手という方だったので、途中で打ち合わせが難航することもありましたが、今回の相談でおおむね道筋は立ったため、あとは必要書類をそろえて、地元の公証役場で公証人と細部のすり合わせに入ることになると思います。

 

しかし、今回は親戚としての身分関係上、私が公証役場で証人(立会人)になることができません

 

※公正証書遺言を作成するには、証人2人が公正証書遺言の作成当日に立会うことが必要となります(民法969条第1号)。 ここでいう証人とは、遺言の内容について何らかの責任を負うものではなく、作成時点での立会いをするだけです。ただし、以下の者は証人になることができないとされています(民法第974条)。

①未成年者
推定相続人・受遺者及びその配偶者並びに直系血族
③公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記及び雇人
今回、私の身分上の立場は②に当たってしまうのですが、同様に、近しい身内の場合は②に該当するため、証人になることができません。かといって、全くの無関係の友人、知人に遺言の立会いを頼むのも抵抗があるとのことで、今回は公証役場に依頼して、証人を手配してもらうことになりそうです(費用は8,000円~10,000円程度)。

 

この場合、公証役場で紹介してもらえる証人の方は、身元のしっかりしている人ですので、仮に遺言の内容が知られてしまっても、それが外部に漏れるというような心配はまずありません。

 

相談者自身はまだまだ元気なのですが、いつ何が起こるかわからないのが人生です。また、早くきっちりした書面を作って、気持ちの上でも安心していただきたいと思います。

 

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